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徳川家康(19)

大久保忠隣が、家康の前に十兵衛長安なる人物を連れてきました。家康は、彼の才能を見抜き、大久保の姓を与えて召し抱えることにします。征夷大将軍となった家康は、江戸に幕府を開き、泰平の世を築くために動き出します。そして、豊臣秀吉の遺言通り、千姫を秀頼に嫁がせるのでした。

主な登場人物

あらすじ

家康の前に大久保忠隣が十兵衛長安と名乗る30あまりのきりりとした顔立ちの男を連れてきます。

長安はこの時40。黄金の埋蔵量を卜えると言ったことで武田信玄の怒りを買い、姓を名乗ることを禁じられていました。長安の話を聴いているうちに家康は、この者がただ者ではないことに気づきます。また、その才能が非常に危険なものであるとの不安も感じ、家康は長安をたしなめるとともに大久保の姓を与え召し抱えることにしました。

慶長8年(1603年)。家康は、征夷大将軍に任命され江戸に幕府を開く決心をします。そして、亡き豊臣秀吉の遺言通り、孫娘の千姫を豊臣秀吉に嫁がせることにしました。

しかし、秀頼は、幼い千姫に興味を示そうとしませんでした。

読後の感想

関ケ原の戦いに勝利した家康は、本格的に泰平の世を築いていくために動き出します。

しかし、豊臣家に眠っている莫大な黄金が、家康を悩ませます。黄金の使い道によっては、再び戦乱の世に逆戻りする危険があるからです。

一方、関ケ原の戦いの後、家康に何の咎めも受けなかった淀の君は、まだ豊臣が天下を治めているのだとの気持ちでいました。やがて、秀頼が16歳になった時、政権が豊臣に自動的に戻って来るとの甘い期待を抱く淀の君。それが、豊臣の滅亡へと向かっていくことを彼女はまだ知りません。

第19巻では、本作の前半から登場していた人物が次々にこの世を去ります。家康の幼少期から登場していた納屋蕉庵も本巻で寿命を迎えます。

家康が幼い頃、陰ながら支えてきた竹之内波太郎が、後に納屋蕉庵となり、堺衆の影の支配者として経済に大きな影響を与えていきました。

納屋蕉庵は、自分の死の直前、茶屋四郎次郎の息子の茶屋清次にこれからの日本の行く末を語ります。世界に目を向ければ、ヨーロッパ諸国が、植民地を求め航海を続けており、日本もこのままだとヨーロッパ諸国との間で戦となるのは避けられません。もはや日本は、国内だけを見ていれば良い状況ではなくなっていたのです。

さて、この納屋蕉庵。実は架空の人物です。著者が、納屋蕉庵を本作に登場させたのには、どのような意図があったのでしょうか。ここまで読み進んできて感じたのは、戦国時代に商人が果たした役割は非常に大きなものだったということです。織田信長が大量の鉄砲を入手できたのも、豊臣秀吉が朝鮮に多くの兵を送れたのも、商人の力によるところが大きいです。納屋蕉庵が本作に登場したことで、読者は、戦国時代の商人の働きの重要性を感じ取ることができます。

他に家康の生母於大、徳川四天王の井伊直政も本巻で亡くなります。茶屋四郎次郎も本巻に登場することなくこの世を去っています。家康を取り巻く環境も変わり、新たに大久保長安が加わって次の時代へと進んでいきます。

徳川家康(19)-山岡荘八
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