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徳川慶喜(3)

大老井伊直弼の安政の大獄で謹慎処分となった一橋慶喜でしたが、桜田門外の変によりその処分が解かれます。皇女和宮の降嫁で権威の回復を画策する幕府。幕政改革を要求し、政治の中枢に入り込もうとする薩摩藩。将軍後見職に推された慶喜は、これを辞退するのでした。

主な登場人物

あらすじ

将軍継嗣問題で口を挟んだ水戸や薩摩などに大老井伊直弼が処分を下していきます。世に言う安政の大獄の始まりです。

水戸の徳川斉昭は永蟄居、一橋慶喜(徳川慶喜)も隠居謹慎を命じられます。また、梅田雲浜や橋本左内などの勤皇の志士も弾圧を受け、次々と命を落としていきました。

井伊直弼の弾圧に対して、水戸藩士たちは憤り、井伊直弼暗殺を企てます。そして、彼らは脱藩し、安政7年(1860年)3月3日に桜田門外で登城中の井伊直弼の行列を襲うのでした。

大老暗殺で権威が失墜しつつある幕府は、朝廷と幕府が力を合わせる公武合体で難局を乗り切ろうと考えます。そこで、幕府は、皇女和宮の降嫁を朝廷に願い出、将軍徳川家茂の御台所とすることを画策しました。

しかし、和宮降嫁と引き替えに朝廷は、薩摩藩の武力を背景に政治総裁職に松平春嶽、将軍後見職に一橋慶喜を就任させる幕政改革を要求します。

ところが、慶喜は将軍後見職の就任を辞退するのでした。

読後の感想

3巻では、反対者を弾圧する井伊直弼が桜田門外で暗殺されます。

井伊直弼は、諸外国を打ち払う攘夷が不可能なことを理解していたのでアメリカとの修好通商条約を調印しました。一方、井伊直弼の政敵とも言える徳川斉昭も攘夷が実行不可能なことを十分に理解していました。

しかし、徳川斉昭は諸外国の要求をただ受け入れるだけでは侵略されてしまうので、日本にとって不利な要求は押し返さなければならないと考えていました。

井伊直弼も徳川斉昭も、開国では一致していたのですが、その中身が少しばかり違っていたと描いているのが、本作の特徴です。

井伊直弼は、水戸が孝明天皇に攘夷をそそのかしていると思い、水戸や勤皇の志士を天皇に近づけないようにすれば、おかしな言説に天皇が惑わされなくなると考えます。ところが、水戸や勤皇の志士を取り除いても天皇の攘夷の意思は変わらず、この時に井伊直弼は外野が天皇をそそのかしているのではないと気付きました。

しかし、時すでに遅し。すでに井伊直弼暗殺計画が水面下で進められていたのです。

井伊直弼暗殺後、権威を失墜した幕府をどう立て直すのか。いよいよ一橋慶喜が幕政に参加しますが、その前に家臣たちの尊皇攘夷の思想を開国に変えなければなりません。

慶喜が家臣たちをどのように説得するのかも、3巻の読みどころです。

徳川慶喜(3)-山岡荘八
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