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徳川慶喜(2)

日米修好通商条約の調印を幕府に迫るハリス。国内では、開国もやむを得ないと考える一派とアメリカの一方的な要求を飲むべきではないと考える一派が激突します。開国か攘夷か。国内の議論がまとめらないうちに井伊直弼は勅許を得ず、日米修好通商条約に調印するのでした。
 
 

主な登場人物

あらすじ

日米修好通商条約の調印を求めるアメリカ。幕府も諸藩の藩主たちも、日本を守るためにはアメリカとの条約調印はやむを得ないと考えていました。

しかし、一方的にアメリカの要求を飲んで条約に調印することは諸外国に弱みを見せることになります。そのため、徳川斉昭や松平慶永(春嶽)らは、攘夷の姿勢を崩すべきではないと主張します。

そして、開国する場合も国内の総意が必要で、幕府の一存で条約に調印するのではなく勅許も得なければならないと幕閣に迫りました。

さらに病弱な徳川家定の後に誰が将軍に就くべきかの議論も同時に起こります。英明な一橋慶喜(徳川慶喜)を次期将軍にすべきとする徳川斉昭の一派。対して紀州の徳川慶福(家持)を次期将軍にするべきだと考える松平忠固の一派。

しかし、慶喜は次期将軍に就くことを望んではいませんでした。

大老に就任した井伊直弼は、水戸の徳川斉昭が我が子の慶喜を次期将軍にしようとするのは、徳川宗家の乗っ取りを考えているからだと思い始めます。そして、次期将軍を徳川慶福と定めたのでした。

早期の条約調印を迫るアメリカのハリス。松平忠固らは、勅許を得ている時間的余裕はないとして、ハリスの要求を受け入れるべきだと主張します。

ところが、井伊直弼は、勅許を得ずに条約に調印するべきではなく、何とか時間稼ぎをできないかと考えます。

しかし、この期におよんで条約調印を先延ばしすることは無理とわかっている井伊直弼は、ハリスとの交渉決裂時には無断調印を許可して欲しいと頼む岩瀬忠震を無言で送り出しました。

ついに幕府は勅許を得ず、日米修好通商条約に調印しました。井伊直弼は、無断調印を推し進めた松平忠固や堀田正睦を処分。幕政に口出しした徳川斉昭や松平慶永らも処罰したのでした。

読後の感想

徳川慶喜の2巻では、日米修好通商条約の調印にいたる過程が描かれています。

開国にいたるまでを描いた歴史小説は、吉田松陰や坂本龍馬など、政治の外側からの視点で物語が進んでいくものが多いのですが、本作では政治の中心から条約調印の過程が描かれています。そのため、なぜ幕府が勅許を得ずに日米修好通商条約に調印したのかが理解しやすいです。

多くの歴史小説では、開国は井伊直弼の独断で行われたとしています。ところが、本作では、井伊直弼は開国に対して水戸の徳川斉昭ら攘夷を主張する人々と同じ考え方を持っていたとして話が進んでいきます。また、攘夷を主張する徳川斉昭も、他の作品では攘夷一辺倒で描かれることが多いのですが、本作では開国を視野に入れた攘夷という姿勢を持っていたとしています。

井伊直弼も徳川斉昭も考えていることは同じだったのですが、井伊直弼の勘違いから両者の関係は険悪なものとなります。

徳川斉昭が、我が子の慶喜を将軍とし徳川宗家の乗っ取りを考えているに違いないと思い込んでいた井伊直弼は、そうはさせじと紀州の徳川慶福を次期将軍に決定します。しかし、その後に慶喜と対面した井伊直弼は、自分が下した決断が誤りであったことに気づきました。

2巻では、井伊直弼目線で物語が進んでいく部分が多く、彼の心の機微が細かく描写されています。安政の大獄から桜田門外の変まで、今後の直弼の心情がどのように動いていくのかが楽しみです。

 
 
徳川慶喜(2)-山岡荘八
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