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徳川家康(22)

武器と金を載せて出港した船が沈没した事件が起こり、採掘した金を自邸に隠していた大久保長安は、それがばれないように黒川谷の採掘場に金を移そうと企みます。大坂との良好な関係を保つため、二条城で豊臣秀頼と面会する家康。しかし、イスパニアのビスカイノ将軍が豊臣秀吉に謁見したことや大久保長安の一件が、人生終盤にきて難題となるのでした。

主な登場人物

あらすじ

江戸城内で、大久保長安の連判状に謀反の疑いがあるとの風評が立ち始めました。

連判状に署名した松平忠輝は、病で臥せっているという大久保長安を見舞いましたが、そこで、仮病であることを知ります。大久保長安は、採掘した金を自邸に隠していることがばれないように採掘作業を行う黒川谷に金を移すため、仮病を使っていたのでした。

その少し前、大久保長安が、武器や金を積んで出航させた船が海賊に襲われる事件が起こり、有馬晴信がその船を沈める事件が起こっていました。沈んだ積み荷が、隠し持っていた金だと発覚すると自分だけでなく、主君の松平忠輝にも害を及ぼすと考えた大久保長安は、その処理をどうするか思案していたのです。

慶長15年(1610年)に家康は、二条城で豊臣秀頼と面会し、江戸と大坂の良好な関係が維持されようとしていました。しかし、イスパニアのビスカイノ将軍と神父のソテロが大坂城で、豊臣秀頼に謁見したことで、世の中は江戸と大坂の間で戦が始まるのではないかとざわつき始めます。

大久保長安の一件も耳にしていた家康は、人生の終盤にきて大きな難題を抱え込むのでした。

読後の感想

泰平の世が築かれようとしていた時にそれを揺るがす大きな事件が起こります。

海外との交易を盛んにしようとする家康でしたが、キリスト教国同士の対立が絡み、国内にも影響を及ぼし始めていました。

イスパニアとポルトガルの旧教国は、イギリスとオランダの新教国を日本から追い出そうと画策します。家康は、交易と信仰を分け、両者と良好な関係を保とうとしていましたが、交易と信仰を分けるのは難しいことを悟り始めます。

そんな状況の中、イスパニアのビスカイノ将軍が大坂城の豊臣秀頼に謁見したのですから、家康の胸中は穏やかではありません。また、大久保長安が、海外と交易するため、日本国内で不要となった武器の輸出を企て、それを載せた船が沈没する事件も起こっており、織田信長、豊臣秀吉が開いてきた泰平への道が閉ざされるのではないかとの懸念も出てきました。

そして、イスパニアとポルトガルとの国交を中止すると、国内のキリシタンたちの弾圧が始まるのではないかとの噂も流れ、旧教を信仰する牢人たちが大坂城に向かい、江戸と戦う姿勢を見せる気配も感じられるようになってきました。

大坂の陣は、家康が豊臣家を滅ぼすために始めた戦だとの印象が強いです。しかし、大坂の陣は、国際的な覇権争いの中で起こった戦と見るのが正しいでしょう。

旧教国は、植民地の獲得の際、現地の人々をキリスト教の教えで手懐けて反乱を起こさせることを常套手段としていました。日本もまた、同じ状況となりつつあり、それをどうやって防ぐかが当時の家康にとっての難題でした。

本巻では、家康の苦悩が読みどころですが、天下を掌握することを諦められない伊達政宗の暗躍も読者の興味をひきます。

徳川家康(22)-山岡荘八
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