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明治天皇(2)

祐宮の誕生から間もなく、浦賀に黒船が来航し、国内は騒然としました。国交を求め威嚇を繰り返すペルリ。冷静に交渉を進めようとする浦賀奉行の香山栄左衛門。それぞれに不安を抱きながらも、幕府はアメリカの国書を受け取るのでした。

主な登場人物

あらすじ

祐宮(明治天皇)の誕生で、宮廷内は明るくなったものの、幕府を取り巻く情勢はただならぬものになってきました。

嘉永6年(1853年)6月3日。浦賀沖にアメリカの4隻の黒船が姿を現しました。

何のために黒船はやって来たのか、浦賀奉行組与力のうちから中島三郎助、香山栄左衛門ら4人が、オランゴ通辞とともに船で黒船に近づき、その用件を伺おうとします。

アメリカ側は、国書を幕府高官に手渡し、国交を樹立することを求めました。しかし、幕府としては国書の受け取りを拒否したく、いったん長崎に回航してから交渉すると述べました。ところが、アメリカのペルリは長崎に回航することを拒否し、黒船を江戸に向けて進ませ上陸しようとします。

結局、幕府は、アメリカと争いになることを避けるため、久里浜への上陸を許可し、国書を受け取ることにしました。

幕府が国書を受けとった後、速やかに立ち去る約束でしたが、ペルリはなおも挑発を続けます。この行為を伝え聞いた孝明天皇は、大の外国人嫌いとなり、日本中でも攘夷の機運が高まり始めるのでした。

読後の感想

明治天皇の第2巻です。

明治天皇の誕生間もなく、浦賀に黒船が来航し、日本国中が騒然となりました。日本が泰平の眠りから覚めたのは、この時だったと言えます。

幕府は、黒船におびえ、一方的に国書を受け取らされ、そして、後に日米和親条約、日米修好通商条約を締結させられたとするのが一般的な見解です。しかし、本作では、幕府とペルリとの間の交渉について、事細かく描かれており、必ずしも、アメリカの一方的な要求をのんだわけではないと描かれています。

異国の地に乗り込んできたアメリカ人も、上陸することには、それなりの不安を感じており、その不安が居丈高な態度を取らせ、空砲を撃つなどの脅迫行為に及んだのだと。

浦賀奉行の香山栄左衛門は、交渉をするうちにアメリカ人の心理に気づき、冷静に交渉を進めようとします。しかし、何かあるたびに威嚇しようとするペルリの態度は、駄々をこねる子供のそれであり、香山栄左衛門を辟易させました。

第2巻では、黒船来航に多くの紙幅が割かれています。明治天皇はまだ生まれたばかりで、ほとんど登場することはありませんし、父の孝明天皇の出番も少ないです。しかし、黒船来航が、後の尊王攘夷運動の高まりに大きな影響を与えたことを考えると、幕府とアメリカとの交渉について多くを描くことは、後の物語の進行にとって重要なのでしょう。

日本近海を騒がしたのは、アメリカだけではありませんでした。ロシアのプチャーチンも、日本との国交を求め長崎に来航し幕府と交渉しています。

4隻の黒船の来航は、アメリカとの国交樹立の問題だけではありませんでした。ヨーロッパ諸国とも交渉しなければならなくなった幕府は、やがて国内にも大きな問題を抱えていくことになります。

明治天皇(2)-山岡荘八
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