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徳川慶喜(6)

王政復古への動きが加速する慶長3年。宮廷内は、開国の可否が奪権闘争の具と化していました。それでも、徳川慶喜は、国の将来のために兵庫開港を決定します。大政を奉還し、新政府のために諸外国と交渉を進める徳川慶喜に対して、薩摩藩は討幕の口実を作るために江戸で強盗を働きます。そして、慶長4年正月。鳥羽伏見で両軍が激突するのでした。
 
 

主な登場人物

あらすじ

慶長3年(1867年)。日本国内は、開国を前提に動いているものの、政治の場ではいまだに兵庫開港の可否が議論されていました。

もはや誰の目から見ても、開国の波は止められないとわかっているのに宮廷内では開国の可否が奪権闘争の具に使われていたのです。

すでに大政奉還を決意していた慶喜は、長州の処分を寛大にすること、兵庫を開港することを朝議で決定することに成功しました。

時代は王政復古に向けて進んでいきます。慶喜は、土佐の山内容堂の建白書を受け、大政奉還を準備します。それと同じころ、岩倉具視や薩摩の大久保利通もまた、武力討幕の詔を得るために水面下で動きます。

そして、10月13日。慶喜は大政奉還を決意しました。一方の岩倉具視と大久保利通も、同日に討幕の密勅を入手したものの大政を奉還した幕府を討つ口実は失われました。

12月に入り、小御所会議が開かれ、慶喜の辞官納地が決議されます。その頃、慶喜は、6ヶ国の使臣を大坂城に呼び、王政復古の大号令によって政権を奉還したことを彼らに告げ、さらにしばらくの間は日本国内のことについては静観して欲しいと説き、新政権に諸外国の圧力がかからないように努めました。

しかし、武力で慶喜を討ちたい岩倉具視と薩摩藩は、江戸で強盗を働き、旧幕府を挑発します。そして、この挑発に乗った旧幕府側は江戸の薩摩藩邸を攻撃し、岩倉具視と大久保利通に武力討幕の口実を与えてしまいました。

慶長4年正月。鳥羽伏見の戦いで旧幕府軍は新政府軍に敗退。慶喜は、大坂城から急ぎ江戸へと戻り新政府に対して恭順の姿勢を貫くことを決意します。

新政府軍を率いて、慶喜討伐のために江戸へ進軍しようとする西郷隆盛。彼が三条大橋を渡ろうとする時、大田垣蓮月から1首の歌が書かれた紙を手渡されるのでした。

読後の感想

徳川慶喜の最終巻です。

今日の徳川慶喜の評価は様々です。自らの保身のために大政奉還を決意した利己的な人物と捉えられることもあれば、鳥羽伏見の戦いの後に家臣たちを見捨てて江戸に逃げた臆病者と捉えられることもあります。

どのように評価した場合でも、徳川慶喜を好意的に見ることは、ほとんどないように思います。

しかし、本作を読み終えると、これまでの徳川慶喜に対する評価は変わるはずです。幕末から明治維新までの動乱は、薩摩や長州が新時代の幕開けのために尽力し、幕府が旧体制の維持を図ろうとしたと思われがちです。

そして、薩長が勤王であり官軍で、幕府は賊軍とされています。ところが、慶喜は勤王第一で常に行動し、孝明天皇からの信頼も篤く、勤王と佐幕は一体のものでした。しかし、鳥羽伏見の戦いで負けたため、旧幕府は賊軍の汚名を着せられることになったのです。

天皇は、人々を分け隔てなく照らす太陽のような存在でもあり、親のような存在でもあります。それが、慶喜が学んだ水戸学の精神です。

子供同士が喧嘩をしていると、親は喧嘩を静止し仲良くするように諭します。それと同じで、天皇も自らの子供たちを討伐するように命じることはないはずなのですが、幕末には長州征伐の勅命や討幕の勅命が下されました。

当時、乱発された勅命は、真に天皇から下されたものではなく、側近たちが偽造したものだったのでしょう。とにかく、どのような手段を使っても、天皇を自分の手の届く範囲に置くことが勤王だと考えたのが、岩倉具視や大久保利通だったと考えられます。

西郷隆盛もまた、岩倉具視や大久保利通の奪権闘争に加担します。慶長に入ってからの西郷隆盛は、徳川慶喜を討つことが、日本を西洋列強から守ることになると考えていました。しかし、西郷隆盛の考え方は、三条大橋で大田垣蓮月から手渡された歌を詠んで変わります。

江戸へと向かう西郷隆盛は、途中、幕臣の山岡鉄舟と会談を行い、江戸城無血開城を決心しました。最終巻での読みどころは、山岡鉄舟と西郷隆盛の会談だと思います。旧幕府は、鳥羽伏見で敗れたとは言え、戦力では薩長を上回っていました。後世の人々は、西郷隆盛が弱った徳川慶喜を助けたと思っていますが、実際は、西郷隆盛が旧幕府と真正面から戦って大打撃を受けることを嫌ったと考えるのが自然です。

山岡鉄舟が、江戸城無血開城の交渉に成功したのは、旧幕府の武力を背景に西郷隆盛を説得したことが一つの要因だと言えます。

本作は、明治維新を再考するのにおすすめです。

 
 
徳川慶喜(6)-山岡荘八
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