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国盗り物語(3)

織田信秀の子の信長に我が娘を嫁がせ、尾張を手に入れようと企む斎藤道三。しかし、信長と面会すると、噂されているようなうつけではないことに気づきました。年老い、最期の時が迫る中、道三は、信長と光秀の2人に後を託すのでした。

主な登場人物

あらすじ

斎藤道三にとって、好戦的な尾張の織田信秀は厄介な存在でした。その織田信秀には、うつけと噂される信長という子がいます。

道三は、我が娘の帰蝶(濃姫)を信長に嫁がせることを考えます。信長が真にうつけであれば、尾張を難なく我が物にできるに違いないと考えたからです。

帰蝶が輿入れした後、織田信秀が亡くなります。信長が父の葬儀で抹香を投げつけたという噂は、道三の耳にも届きました。織田信秀ほどの男が、嫡男に選んだ信長は、本当にうつけなのか。道三は、それが気になり、信長との面会を望みました。

道三と信長の面会は、美濃と尾張の国境にある聖徳寺で行われることが決定します。道三は、信長がどのような出で立ちで現れるのか、その行列を百姓家からこっそりと窺います。

すると、信長は噂通りのうつけの姿で馬に乗りやってきました。しかし、信長の連れる兵たちは、三間柄の槍を500本、弓と鉄砲を500挺装備しており、道三の度肝を抜きます。

道三は、信長との面会を終え、信長の器の大きさに気づきました。やがて、美濃は信長によって支配されるだろうと。

道三と信長の面会後、斎藤家に大きな影響を与える事件が起こります。信長の家臣である津田八弥が、同じく信長の家臣である佐久間七郎左衛門を斬り、美濃に逃げたのです。

信長は、それとなく道三に佐久間をかくまうように依頼し、道三も承諾しました。しかし、津田八弥の婚約者であったお勝が仇討のために美濃を訪れ、道三の子の義竜の助力により本懐を遂げます。

この事件が、やがて、道三と義竜との間の戦いに発展するのでした。

読後の感想

国盗り物語の第3巻です。この巻から、主役は織田信長に変わります。

斎藤道三は、美濃を掌中に収め、さらに尾張も我が物にできるのではないかと考えます。そこで、娘の濃姫を織田信長に嫁がせたのですが、信長は、周囲が噂するような「うつけ」ではありませんでした。

道三も年老い、自分の代で天下を統一することは不可能だと思い始めていた時に出会った信長は、自分の後継者に相応しい器量を備えていると気付きます。そして、手紙を何度も信長に送り、自分の智恵を信長に授けていきました。

一方で道三は、家臣の明智光秀の才能も認めていました。やがて、道三は、子の義竜との戦いで戦死しますが、彼の天下統一の野望は、信長と光秀の2人に託されます。

第3巻では、信長が主役ですが、物語は明智光秀の視点で進んでいきます。信長が、桶狭間の戦いで勝利したり美濃を攻略したりするのを離れた場所で知る光秀は、信長を大した人物ではないと思いたい気持ちとは裏腹にその実力を認めないわけにはいきません。

信長も光秀も、道三によって天下統一への道しるべを教えられます。しかし、2人の採る道は違っていました。信長が自ら頂点に立とうとするのに対して、光秀は衰退した権威を再興して足利幕府のもとでの天下の平定を目指します。

また、道三亡き後の2人の境遇も正反対でした。信長が尾張の殿さまであるのに対し、光秀は一牢人にすぎません。

家柄では明智が上、しかし、現状は織田の力が上。

この状況が、光秀の原動力となり、諸国を奔走させます。

余談ですが、司馬遼太郎さんの作品に竜馬がゆくがあります。主役は坂本龍馬です。「龍馬」ではなく「竜馬」と表記したのは、この作品がフィクションだからだと噂されています。坂本龍馬は実在の人物ですが、坂本竜馬は架空の人物だと。でも、国盗り物語では、「斎藤義龍」を「斎藤義竜」と表記していますし、その子の「龍興」も「竜興」と表記していますから、司馬さんは、単に「龍」を「竜」と書いただけなのでしょう。

国盗り物語(3)-司馬遼太郎
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