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箱根の坂(中)

今川義忠亡き後、駿河の実権を握った今川範満。京に戻っていた北条早雲は山中小次郎らを連れて再び駿河に下り、義忠と千萱の子竜王丸のために尽力します。早雲が駿河に来てから11年。ついに今川範満から守護の地位を竜王丸に取り戻すべく、早雲は動き出すのでした。

主な登場人物

あらすじ

駿河から京に戻った早雲は、再び山中小次郎と荒木兵庫を伴い駿河に下ることになりました。

駿河では、亡き今川義忠と千萱(北川殿)との間に生まれた竜王丸(今川氏親)と対面。この時、早雲は竜王丸の命を守ることを誓います。

この頃の駿河は、今川範満が事実上支配している状況でした。しかし、本来、駿河の守護となるべきは竜王丸。早雲は竜王丸が今川家を相続するために尽力することになるのでした。

また、早雲は駿河滞在中に太田道灌と出会い大きな衝撃を受けました。

興国寺城を駿河滞在の拠点とした早雲は、10年以上の歳月をかけて民政に力を注ぎ、土地の者たちから信頼を得るようになります。しかし、この間に今川範満は自らを駿河の守護だと言わんばかりの振る舞いをし続け、今川家を我が物にしようとしていました。

町衆、地侍、国人。駿府とその周辺の土地の者たちの今川範満を見る目が冷やかになっているのを感じ取った早雲は、ついに範満排斥のために動き出すのでした。

読後の感想

応仁の乱後、北条早雲は駿河に下り千萱と竜王丸と会います。そして、京に戻った早雲は再び山中小次郎らを連れて駿河に下向し、竜王丸のために働くことになりました。

箱根の坂の中巻では、北条早雲がじっくりと時を待つ姿が描かれています。すぐに今川範満から守護たる地位を竜王丸の手に取り戻すことは可能だったでしょうが、早雲はそうしません。

日本全土が応仁の乱を機に戦国乱世に突入しましたが、その原因の一つとなったのが家の相続問題でした。早雲は、今川家で同じことが起こらないように時間をかけて、駿河に住む者たちの心が竜王丸に向かうのを待ち続けます。

その期間は11年。そして、早雲は54歳になっていました。

戦国ものでは、織田信長にしても豊臣秀吉にしても、早期に動いたことで良い結果を得られた場面が描かれることが多いです。そういった歴史小説に慣れていると、箱根の坂の展開の遅さを退屈だと思うでしょう。

でも、このじっくりと時間をかけて成果を上げる姿勢こそが北条早雲の魅力ではないでしょうか。

箱根の坂(中)-司馬遼太郎
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