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坂の上の雲(7)

奉天に退いたロシア軍を追う日本軍。強固なロシア軍の守りを破るため、東から鴨緑江軍、西から秋山支隊と乃木第三軍を敵後方に迂回させ、黒木、野津、奥の3軍が正面攻撃を開始します。しかし、頑強なロシア軍の前に日本軍は苦戦を強いられます。

主な登場人物

あらすじ

奉天まで退却したロシア軍を追うように日本軍は北に進みます。

両軍の戦いは、東の鴨緑江軍の攻撃から始まりました。左翼の秋山支隊も旅順から合流した乃木第三軍とともに北に進軍。両翼がロシア軍の背後をつく形を見せ、黒木、野津、奥の3つの軍が正面攻撃をする作戦です。

兵力も火力もロシア軍に劣る日本軍は、火砲を正面に集中させます。しかし、要塞化したロシア軍の中央には大きな打撃を与えることができず苦戦を強いられます。

右翼の鴨緑江軍は、ロシア軍の反撃にあい進軍できない状況。左翼の乃木第三軍も、少しずつ北へと進むものの被害が拡大する一方。戦況は、圧倒的にロシア優位に進んでいました。

しかし、秋山支隊がロシアの鉄道線路を遮断しに北進する素振りを見せると、ロシア軍のクロパトキンは動揺し、全軍を鉄嶺まで退却する指示を出します。不可解な退却命令に動揺する将兵たちは、軍規を無視し戦場から立ち去っていきました。

これ以上の戦いは、日本陸軍には不可能と見た児玉源太郎は、形成が優位な今こそ講和する時期と考え、東京に帰る決心をするのでした。

読後の感想

第7巻では、日本陸軍とロシア陸軍との奉天会戦を中心に描かれています。

兵力、火力ともにロシア軍が圧倒しており、日本軍が勝てる見込みはほとんどありません。しかし、日本軍が勝ったところに歴史の妙味を感じます。

日本兵は勇敢に戦い、気力ではロシア兵を上回っていました。しかし、戦いのたびに死傷者が膨れ上がり、残った兵たちの気力は次第に衰えていきました。それでも、日本軍がロシア軍に勝てたのは、ロシア軍を指揮するクロパトキンが、あまりに慎重になり、あまりに過大に日本軍を評価していたことにあります。

日本軍と対峙する指揮官たちは、あと一歩で日本軍を潰走させられるところまで来ているとクロパトキンに報告していました。それにも関わらずクロパトキンは全軍に退却命令を出します。秋山支隊がロシアの鉄道線路を遮断する素振りを見せたことが、その理由です。

しかし、秋山支隊には鉄道線路を遮断するほど深くまで進軍できる兵力も火力もありませんでした。ところが、クロパトキンが秋山支隊の動きを過剰に恐れたため、全軍の退却を決定し、日本軍はかろうじて戦況を優位な形で陸戦を終えることができました。

もしも、ロシア陸軍を指揮するのがクロパトキンでなければ、日本陸軍は奉天会戦で崩壊していたかもしれません。

この時の日本陸軍の経験が、その後の陸軍の体質を決定づけたと言っても良いでしょう。武器よりも兵士の精神力が勝敗を決するとの信念が生まれ、やがて、第2次世界大戦で大敗することになります。

第7巻の後半では、いよいよバルチック艦隊が日本近海に姿を現します。日本が日露戦争の勝利を決定づけるためには、バルチック艦隊を全滅させる必要があります。

バルチック艦隊が一体どこからやって来るのか、その予想が当たるか外れるかで勝敗が大きく変わることから、秋山真之はバルチック艦隊の航路に大いに悩まされました。

坂の上の雲(7)-司馬遼太郎
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