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花神(下)

四境から迫りくる幕府の大軍を大村益次郎が指揮する長州藩兵が迎え撃ちます。彼の計算しつくされた作戦は、各戦線で成果を上げ、遂に幕府軍を撤退させます。鳥羽伏見の戦いで勝利した薩長軍が向かった江戸。遅れてやってきた大村益次郎が彰義隊壊滅のための作戦を練り上げます。
 
 

主な登場人物

あらすじ

長州藩は、四境から攻めてくる幕府軍に各戦線で勝利しました。その作戦を考え指揮にあたったのは蘭学者の村田蔵六(大村益次郎)でした。

しかし、この戦いの後、長州藩は高杉晋作を病で失います。高杉は、蔵六の軍事の才能を評価しており、「大村を仰げ」の遺言を奇兵隊に残しました。

慶応3年(1867年)9月。山口政事堂で、薩長の会合が開かれ京都クーデターの計略ができあがります。その頃、蔵六は三田尻でイネと偶然の再会を果たすのでした。

風雲急を告げる京都。慶応4年正月に幕府軍と薩長軍が鳥羽伏見で激突します。この戦いで幕府軍は大坂城に撤退。しかし、徳川慶喜は、すでに幕府軍を見捨てて大坂城から脱出していました。

鳥羽伏見の戦いから1ヶ月後。蔵六は京都に上り、新政府に設置された軍防事務局で働きます。

この時期、官軍は東海道を東下し江戸に向かいます。そして、西郷隆盛と勝海舟の会談により江戸城無血開城が実現しました。

しかし、新政府に恭順する徳川慶喜を守護するために結成された彰義隊が、江戸で官軍を手こずらせます。その頃、江戸で官軍の指揮をしていたのは、薩摩藩の西郷隆盛と海江田信義でした。そこへ、京都から軍事上の指揮権を持った村田蔵六がやってきます。

遅参した村田蔵六が指揮権を持っていることを苦々しく思う海江田信義。それを尻目に蔵六は、彰義隊を一瞬で壊滅させる作戦を立てるのでした。

読後の感想

花神の最終巻です。いよいよ大村益次郎が歴史の大舞台に登場します。第2次長州征伐では、コンピュータのような頭脳を回転させて作戦を立てます。

数の上では圧倒的に有利な幕府軍でしたが、大村益次郎の見事な作戦にはまり、各戦線で敗北を喫します。

鳥羽伏見の戦いで薩長が幕府軍を破り、舞台は江戸へと移ります。ここでも、大村益次郎の頭脳が冴えわたります。彼の立てた作戦は見事な成果を上げ、彰義隊を壊滅させましたが、この戦いで彼の運命が大きく変わったと言っても良いでしょう。

大村益次郎は非常に無愛想で他人から誤解を受けることがしばしばありました。江戸での作戦会議でも、薩摩藩の海江田信義を不愉快な気持ちにさせ、それが後に悲劇を生むことになります。

この物語では、大村益次郎の感情はあまり描写されていません。まるで機械のように考え、機械のように実行する大村益次郎。でも、シーボルトの娘のイネと一緒にいるときには、彼の感情が所々で描かれています。

「維新は葵丑(ペリーが来航の嘉永六年)いらい、無数の有志の屍のうえに出できたった。
しかしながら最後に出てきた一人の大村がもし出なかったとすれば、おそらく成就はむずかしかったにちがいない」

これは、晩年に木戸孝允(桂小五郎)が述べた言葉です。

明治維新は、ペリー来航から15年の間に様々な事件が起こって実現したのですが、大村益次郎が登場したのは、最後の2年だけです。花神の物語の進み方も上巻と中巻では、大村益次郎が表舞台に出てくる気配を感じさせません。そして、下巻になって、やっと彼の活躍が描かれるのですが、それもそう多くはありません。

大村益次郎が歴史の舞台にほんの一瞬だけ登場したのだということを花神ではうまく描写されています。

 
 
花神(下)-司馬遼太郎
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