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風神の門(上)

大坂冬の陣間近の京都で、霧隠才蔵は三河者に襲われます。人違いから発生したこの事件は、やがて才蔵の運命を変えることに。甲賀忍者の猿飛佐助や様々な女性との出会い。いつ徳川と豊臣との間で戦が始まるかもしれない時期に才蔵は大きな仕事をするために旅立つのでした。

主な登場人物

あらすじ

慶長18年(1613年)11月。京都の八瀬の里で霧隠才蔵が何者かに襲われます。しかし、襲った相手は人違いに気づき退散しました。この事件が霧隠才蔵の運命を変えることになります。

才蔵を襲ったのは三河者。そして、彼らが狙っていたのは豊臣家と深い縁がある菊亭大納言(晴季)の娘でした。

才蔵は菊亭家の邸に忍び込み、なぜ三河者が菊亭大納言の娘を狙ったのかを探ろうとします。

一方、真田幸村に仕える猿飛佐助は、関ヶ原の戦いで牢人となった者たちと連絡を取り、徳川と豊臣との間に戦が始まった時には豊臣に味方するように誘っていました。

菊亭大納言の娘の正体を探る才蔵は、やがて猿飛佐助と出会います。自分の腕だけで世の中を渡ろうとする才蔵と信頼できる主君に仕えることを良しとする佐助。

相反する生き方を望む二人でしたが、力を合わせて一つの仕事をやり遂げようとするのでした。

読後の感想

伊賀忍者の霧隠才蔵を主人公にした作品です。大坂冬の陣間近の上方で、才蔵が事件に巻き込まれるところから物語が始まります。

風神の門では、様々な女性が登場し才蔵と縁ができていきます。菊亭大納言の娘の青子、豊臣家に仕える大野治長の妹の隠岐殿、隠岐殿に仕えるお国など、才蔵の近辺で事件が起こる時には必ず女性たちが関わっています。

時代小説では、武士たちは主君に仕えることが当たり前のように描かれることが多いのですが、この作品で登場する霧隠才蔵は、己の能力を活かして世渡りしていく忍者として描かれています。現代だと、包丁1本で店を渡り歩く料理人やフリーランスといったところでしょうか。この辺りの描写は新鮮です。

忍者が主人公の作品なので、もちろん忍術も随所で使われます。才蔵が使う忍術は様々ですが、作中では人の心を操る催眠術のような感じの忍術が多いですね。

風神の門(上)-司馬遼太郎
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