夏草の賦(上)
織田信長の家臣明智光秀に仕える斎藤利光の妹菜々は、長宗我部元親との縁組を承知し土佐へ向かいます。元親は、周辺の敵を知略で降し、着実に四国を平定していきます。しかし、縁を結んだはずの織田家から四国の伐り取りを認めないとの使者が来たことから、元親は織田信長と戦う決意をするのでした。 |
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主な登場人物
あらすじ
織田信長の家臣明智光秀に仕える斎藤利三に菜々という美貌の妹がいました。
土佐の長宗我部元親は、遠く離れた美濃に菜々を妻に迎えたいと伝えます。まだ尾張と美濃の国主に過ぎない織田信長ですが、織田家と縁を結ぶことは、長宗我部家の将来に大いに役立つだろうと考えたからです。
菜々は、この縁談を承知し土佐へ。
25歳の元親は、まだ岡豊城を居城とする小大名にすぎません。しかし、長らく争っていた本山氏を調略によって降し、一条兼定も知略によって出家させ、四国を着実に我が物としていきました。
その頃、織田信長は近畿も支配するほど強大となっていました。元親は、使者を送り、織田家とさらに縁を深め、四国平定の基礎を固めます。
しかし、元親によって国を追われた者たちが織田家を頼ったため、長宗我部と織田との関係は不穏なものとなっていくのでした。
読後の感想
長宗我部元親を主人公とした作品です。
戦国時代を描いた作品は、織田信長や徳川家康など、本州を中心に物語が進んでいくものが多いですが、本作は、四国の長宗我部家の視点で戦国時代が描かれています。
当時の土佐(高知)は、織田家にとって外国のように遠い地でした。その遠国土佐の長宗我部元親が、明智光秀に仕える斎藤利三の妹菜々を嫁に欲しいと伝えるところから物語が始まります。
まだ、美濃と尾張の2国しか領していない織田家と縁を結ぼうとした元親には先見の明があったと言わざるを得ません。
元親は、武力を正面にして戦うよりも、知略を用いて敵を降すことに才能がありました。そして、周辺の敵は、元親の知略によって国を追われ、織田家を頼るようになります。
これが、長宗我部と織田の運命に大きな影響を与えます。織田と戦えば、負けるのは必然。しかし、多くの家臣を抱える元親は、織田と戦わざるを得ません。
元親のもとに織田家から使者としてやってきたのは、菜々のもう一人の兄・石谷光政でした。この石谷光政と元親の出会いが、戦国時代の大事件につながっていくのではないかと予感させ、上巻は終わります。
夏草の賦(上)-司馬遼太郎 |
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