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坂の上の雲(5)

難攻不落の旅順要塞に白兵突撃を繰り返す乃木第三軍。死傷者は、ロシア軍よりも圧倒的に多く攻略の糸口を見いだせません。第三軍の指導部に業を煮やした児玉源太郎は、乃木希典から指揮権を譲り受け、攻撃目標を二〇三高地に切り替えます。そして、一気に旅順を陥落させ、港内に停泊中のロシア軍艦を全滅させるのでした。

主な登場人物

あらすじ

旅順要塞を攻撃する乃木第三軍から児玉源太郎に届く報告は芳しいものではありませんでした。

乃木第三軍は、白兵突撃を繰り返し、死傷者をただ増やすだけの状況。このままでは、日本はロシアに敗北すると考えた児玉は、乃木希典のもとに行き、指揮権を移譲するよう説得します。

そして、乃木は、児玉の申し入れを飲み指揮権を委譲しました。

児玉は、海軍からの要請通り、二〇三高地を攻撃目標とし、二十八サンチ榴弾砲を二〇三高地に集中させ、兵士たちも当高地に突撃させました。

ついに二〇三高地を陥落させた第三軍は、二〇三高地越えで旅順港内に停泊するロシア軍艦を砲撃。海軍にとって悩みの種であったロシアの太平洋艦隊を全滅させることに成功しました。

二〇三高地を失ったロシア軍の防御態勢は一気に弱くなり、ロシア兵の士気も失われ始めます。旅順要塞は、まだ余力を残していたものの、ステッセルは降服を決意します。

その頃、ロシアのバルチック艦隊は喜望峰を越え、東へと進んでいました。旅順の陥落は、バルチック艦隊の乗組員も知るところとなり、彼らの士気は次第に下がっていくのでした。

読後の感想

第5巻では、二〇三高地の攻防が読みどころとなっています。

旅順を攻撃していたのは、乃木希典が指揮する第三軍でした。この第三軍に対し、海軍は二〇三高地を攻め落とし、そこから旅順港内のロシア艦隊を砲撃して欲しいと頼んでいました。そのための大砲も海軍が貸すとまで言ったのですが、第三軍はこれを断り、ただ白兵突撃を繰り返すだけでした。

太平洋戦争での兵士の精神力に頼る陸軍の方針は、このときに生まれたのだろうと著者の司馬遼太郎さんは考えているようです。

二〇三高地は、児玉源太郎が第三軍を指揮することになって早期に攻略できました。そして、旅順港内のロシア艦隊も全滅させることができました。もしも、バルチック艦隊が日本海に来る前にロシアの太平洋艦隊を全滅できていなければ、日露戦争は日本の負けで終わっていたかもしれません。

第5巻では、バルチック艦隊の航行についても描かれています。バルト海からアフリカ大陸の最南端喜望峰を経て日本海を目指していたバルチック艦隊ですが、長旅で乗組員の戦意は次第に喪失していきました。特に旅順の陥落は、乗組員に大きな失望を抱かせたようです。

秋山好古と真之の兄弟は、第5巻ではほとんど登場しません。最後の方で、好古が登場しますが、第5巻では、児玉源太郎と乃木希典を中心に物語が進んでいきます。

坂の上の雲(5)-司馬遼太郎
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