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世に棲む日日(4)

長州藩内を牛耳る佐幕派を一掃するために起ちあがった高杉晋作と山県狂介。クーデターの成功後、身の危険を感じた晋作は、おうのとともに長州を去りましたが、藩の危機を救うため再び起ちあがります。シリーズ完結編。

主な登場人物

あらすじ

幕府の長州征伐が始まると、藩内は佐幕派が牛耳るようになりました。これに対して高杉晋作が元治元年(1864年)12月に挙兵します。また、山県狂介(山県有朋)が指揮する騎兵隊などの諸隊も呼応し、晋作は馬関(下関)の占領に成功しました。

クーデターが成功し、藩内から佐幕派が一掃されると、晋作は藩の要職には就かず、伊藤俊輔(伊藤博文)とともに洋行することにし、藩から三千両の資金を受け取りました。

しかし、晋作の洋行は実現せず、芸者の「おうの」とともに大坂へと旅立ちます。大坂から四国に渡った晋作とおうのは、幕府の役人に捕えられそうになりますが、博徒の日柳燕石(くさなぎえんせき)の助けにより危機を脱し、無事に長州へと戻ることができました。

晋作が長州に戻った頃、幕府の大軍が攻め寄せてくるのに対して、藩内は臨戦態勢に入っていました。

慶応2年(1866年)6月12日。

晋作は、迫りくる幕府海軍を迎え撃つため、夜の海に丙寅丸を走らせるのでした。

読後の感想

世に棲む日日の最終巻です。

高杉晋作が、騎兵隊を率いて幕府軍と戦う場面を中心に描かれそうなのですが、最終巻では彼の逃避行に多くのページ数が割かれています。第1次長州征伐で藩内を佐幕派が牛耳った時に命の危険を感じて逃げ出した晋作。再び長州に戻って来るときには、まるで鬼が出たかのような佐幕派の狼狽ぶりが、時代が晋作を求めていたことを読者に感じさせます。

佐幕派を藩内から一掃した後も、晋作は長州から逃げ出します。この時は愛人の「おうの」と一緒です。三味線を弾きながらの逃避行は、まるで物見遊山にでも出かけるかのようです。

命を狙われることもありましたが、おうのとの逃避行が、晋作の生涯で最も楽しかった時期かもしれません。

おもしろき こともなき世を
 おもしろく

晋作は最後にこの歌を詠みました。世に棲む日日の晋作は、おもしろくない世の中ではあったものの、おうのとの旅で、おもしろおかしく楽しい時間を過ごせたという気持ちをこの歌に込めているように思えます。

世に棲む日日(4)-司馬遼太郎
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