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前田利家(下)

豊臣秀吉に秀頼が誕生すると、秀吉と関白秀次の仲が険悪となりました。やがて秀次は高野山に追放された後、自害して果てます。前田利家は、秀頼の後見となり豊臣政権で重要な立場となります。しかし、秀吉がこの世を去ると、徳川家康が天下を狙いだし、利家はそれを阻止しようとするのでした。

主な登場人物

あらすじ

豊臣秀吉に後継ぎの秀頼が誕生しました。

関白の豊臣秀次は、自分の地位が危うくなるのではないかと不安を抱え、次第に秀吉との仲が悪くなります。そして、秀吉は、秀次を高野山に追放し自害を迫り、秀次の親族も処刑しました。

この事件の後、前田利家は、秀頼の後見となり、豊臣政権の地位を高めました。

この頃、朝鮮に出兵していた秀吉輩下の小西行長が、明との講和を進めていました。しかし、この講和は実現せず、朝鮮での戦闘が続くのでした。

秀吉の体調は、次第に悪くなり、それとともに利家の身体も衰え始めました。

秀吉がこの世を去ると、豊臣政権は分裂し始め、徳川家康になびく武将が増えだしました。徳川家康に対抗できるのは、利家だけでしたが、すでに利家も老い、我が子に後を託すことしかできませんでした。

読後の感想

前田利家の最終巻です。

晩年の利家は、五大老となり豊臣政権で重要な地位につきました。秀吉からの信頼も厚く、秀頼の後見にもなりました。

しかし、秀吉の身体が衰えだすと、利家もまた老い始めました。2人の老いは、豊臣政権内部の派閥争いを招きます。

徳川家康は、豊臣秀吉の死後に武将たちを自分の味方に引き入れ関ヶ原の戦いで勝利したと思われがちですが、すでに秀吉の晩年から、その勢力を強めるために陰で動いていました。

前田利家も、徳川家康に対抗できる立場にありましたが、身体が老いていく中では、まともに張り合うことができません。それでも、秀吉亡き後も、利家存命中は、家康は動くことができませんでした。

利家は、豊臣家の行く末を案じてこの世を去りました。しかし、彼が本当に案じていたのは、前田家の行く末だったのでしょう。

自分がこの世を去れば、きっと徳川の天下となるに違いない。だからと言って、前田家が徳川になびくと、豊臣家の恩に報いることができません。

利家は、最期に前田家を我が子の利長と利政に託すことしかできませんでしたが、加賀百万石の前田家は、幕末まで存続しました。利家の最後の言葉が、前田家を滅亡から救ったのでしょう。

前田利家(下)-津本陽
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