大わらんじの男(1)
紀州藩主光貞の子として産まれた新之助は、たくましく、そして、心優しく育っていきます。しかし、新之助には2人の兄がおり、藩主の地位を望める立場にありませんでした。ところが、兄たちが次々と謎の死を遂げ、新之助に紀州藩主となる道が開けるのでした。 |
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主な登場人物
あらすじ
大猪を鉄砲の銃身で殴って倒すほど、筋骨たくましく育った新之助(徳川吉宗)は、父光貞から授かった鍔を小姓たちに分け与える優しい心も持っていました。
光貞は、新之助の振る舞いを好もしく思い、2人の兄よりも新之助に紀州藩の行く末を託したいと考えるようになります。
光貞の思いを知る服部忠左衛門と石川門太夫は、新之助を紀州藩主とすべく裏で動き始めます。
年老いた光貞は病気がちとなり、新之助の兄綱教が紀州藩主となっていました。しかし、和歌祭で、綱教は急に体調を崩して亡くなり、頼職が跡を継ぐことになります。
その頼職も、光貞危篤との報せを受け、江戸から急ぎ紀州に戻ったことが災いし、光貞薨去から間もなく体調を崩し亡くなるのでした。
読後の感想
徳川吉宗を主人公とした作品です。第1巻では、吉宗が新之助と呼ばれていた若き頃の逸話を中心に物語が進んでいきます。
紀州藩主光貞の子として産まれた新之助ですが、彼には2人の兄がおり、藩主になることはないと思われていました。しかし、2人の兄が次々と亡くなったことから、新之助は紀州藩主となります。
新之助は、大猪を殴り倒すほどたくましい青年に成長していましたが、一方で、自身が肥溜めに落ちたことを領民のせいにしなかったり、光貞からの褒美の品を近習に分け与えるなどの優しさも持ち合わせていました。光貞は、名君と呼ばれる資質が生まれながらにして備わっていた新之助を紀州藩主とすることを望みます。
その光貞の思いは、服部忠左衛門と石川門太夫らの工作により実現することになります。ここが第1巻の読みどころです。
徳川吉宗の紀州藩時代を描いた著者の作品には『南海の龍』もあり、『大わらんじの男 第1巻』と内容が被っています。先に『南海の龍』を読んだ方は、内容の復習になってしまいますが、読んだことがない方にとっては、綱教、頼職の死の描かれ方に引き込まれることでしょう。
大わらんじの男(1)-津本陽 |
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