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夢のまた夢(5)

明との和睦が成らず、再び朝鮮戦役が始まります。そんな中、秀吉は我が子秀頼を可愛がりながらも、自分の死が近づいていることにおびえます。関白秀次の狂乱、泥沼化する朝鮮戦役。年老いた秀吉には解決すべき幾多の難題が残されていました。

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主な登場人物

あらすじ

秀吉が母大政所の葬儀を終えた頃、朝鮮では義兵の蜂起、兵糧の不足に諸将が悩まされていました。小西行長が、明との和議を画策するものの、その内容は秀吉の意に沿わないものであり、朝鮮での戦いが再開されます。

国内では秀頼が誕生し秀吉は大いに喜んでいましたが、関白の豊臣秀次は地位の保全に悩まされ、強度の神経衰弱の症状が出始めました。

秀吉もまた病気がちになり、幼い秀頼の行く末を案じるようになります。

泥沼化する朝鮮戦役、老いる我が身。そのような中、秀吉は醍醐の花見を盛大に催すのでした。

読後の感想

夢のまた夢の最終巻で、晩年の秀吉、朝鮮出兵について濃く描かれています。

百姓から天下人まで上り詰めた秀吉。欲は際限なく膨らみ、自分に逆らう者は容赦なく死に追い込む残虐性が現れます。自らの力を誇示するためなのか、国内の平和を維持するためなのか、晩年の秀吉の行動には謎が多いですね。

しかし、秀吉が最も人間味あふれる姿を見せたのも晩年だったのではないでしょうか。戦国武将は、常に死と向かい合い、いつでも死ねる覚悟を持っていましたが、晩年の秀吉は生へ執着し始めます。その最大の理由は、幼い我が子秀頼の行く末を案じたからでしょう。

戦国の動乱期を生き抜いてきた秀吉は、権力者の死によりその家が衰退することをよく理解していました。織田家も武田家も戦国乱世の中で大きな力を持っていましたが、信長の死、信玄の死で力は衰えました。

それをわかっていたからこそ、秀吉は自分の死後、豊臣家が衰退し滅亡するのを防ぐために苦心したのでしょう。五大老や五奉行に秀頼に尽くすことを誓わせた秀吉でしたが、そのようなものが何の意味もないことを最も理解していたのも秀吉でした。

それでも、秀頼の行く末を考えると、どんなに無意味とわかっていることでも何かしておきたいという気持ちが秀吉の胸中にあったのでしょう。

秀吉の死によって豊臣家はどうなるのか、朝鮮に残された諸将は無事帰国できるのか、読後にはそういった問いが頭の中を巡ります。

夢のまた夢(5)-津本陽
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