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南海の龍

紀州藩主徳川光貞の四男として産まれた新之助は、兄たちよりも心身ともにたくましく成長していきます。そして、英君になるための教育を施された新之助は、家臣たちからも期待される人物となりました。しかし、二人の兄の存在が、新之助が藩主となる道を遮るのでした。

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主な登場人物

あらすじ

紀州藩主徳川光貞の四男として誕生した源六(徳川吉宗)は、11歳で新之助と改名します。

武芸に優れた新之助は、江戸育ちの二人の兄より心身ともにたくましく、父光貞は行く末に大きく期待し、家臣たちの中には熱狂的な忠誠をささげる者もいました。

英君になるための教育を施されるとともに、領民の暮らしから教訓を得た新之助は、周囲の期待通りに成長していきます。

光貞の後に藩主となったのは長男の綱教でした。綱教の身に何かあっても、三男の頼職が次の藩主となることから、新之助が紀州藩主になれる可能性は低い状況にありました。ところが、二人の兄の相次ぐ死により、新之助が紀州藩主となる時がやって来るのでした。

読後の感想

徳川吉宗を主人公にした作品です。吉宗の誕生から八代将軍になるまでの前半生を描いています。

名君の誉れ高い吉宗ですが、生誕時に将軍になれる確率は極めて低い状況にありました。五代将軍綱吉の後を継いだのは家宣でしたが、家宣の嫡流が途絶えた場合でも、先に尾張藩から将軍が選ばれることから、御三家の紀州藩主の子に産まれても、簡単に将軍への道が開けるわけではありません。

ところが、家宣の子の家継が早逝し、次期将軍と期待されていた尾張藩の徳川吉通も亡くなり、その3ヶ月後には吉通の嫡男五郎太も急死するという不幸が相次ぎ、その時、紀州藩主だった吉宗が8代将軍となりました。このような偶然が重なり将軍となった吉宗ですが、そこには何か裏があるように感じられます。

本作は、その裏を描きながら物語が進んでいきます。

吉宗が将軍になる前にまず紀州藩主とならなければなりません。しかし、彼には二人の兄がいるため、紀州藩主となる望みは薄いものでした。しかし、兄たちが相次いで亡くなり、幸運というべきか、吉宗が紀州藩主となります。

吉宗が紀州藩主となるために重要な役回りを演じるのが、藩の隠れ目付である石川門太夫です。彼の影の働きで次々と政敵が葬り去られている過程が本作の読みどころになっています。

時代劇に登場する爽やかな徳川吉宗からは想像できない紀州時代のどろどろとした政争が描かれています。

南海の龍-津本陽
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