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夢のまた夢(1)

天正10年6月2日。羽柴秀吉が備中高松城を水攻めにしている最中に織田信長が本能寺で明智光秀に討たれます。思わぬところから、その情報を入手した秀吉はすぐに上方に引き返し、天王山で明智光秀と対峙するのでした。

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主な登場人物

あらすじ

天正10年(1582年)6月2日。羽柴秀吉(豊臣秀吉)に仕える前野将右衛門(長康)は、本能寺で織田信長が明智光秀に討ち取られたことを知ります。

その頃、秀吉は備中高松城を水攻めにしていました。本能寺の変の報せは、思わぬところから秀吉にもたらされます。人目もはばからず主君の織田信長の死を嘆き悲しむ秀吉。しかし、ここから彼の栄達の道が開けるのでした。

信長の仇討のため、秀吉はすぐに毛利と和睦し全軍を上方に引上げ、京都の天王山で明智光秀を破り、見事本懐を遂げます。

そして、織田家臣団が終結した清州会議では、柴田勝家が推挙する織田信孝ではなく、三法師に織田家の家督を継がせることに成功します。これにより、織田信長が進めてきた天下統一の道は秀吉に受け継がれるかに思われましたが、彼の前に柴田勝家が立ちはだかります。

羽柴秀吉と柴田勝家との関係は次第に険悪となっていき、やがて両者は賤ヶ岳で激突するのでした。

読後の感想

豊臣秀吉を主人公にした作品です。物語の始まりは、本能寺の変からで、秀吉の生い立ちから織田信長の下で活躍するまでの期間は描かれていません。下天は夢かの続編のような感じですね。

この作品では、随所で人の心を読むのが上手い秀吉をみることができます。特に清州会議から賤ヶ岳の戦いまでは、秀吉の人心掌握の見事さに感嘆します。織田家の家臣団の中では、秀吉に味方すべきか柴田勝家に味方すべきか迷う者たちもいました。前田利家もその一人です。

柴田勝家に大恩ある前田利家が、なぜ秀吉に味方することになったのか。相手の視点から物事を考えることができる秀吉でなければ、前田利家は賤ヶ岳の戦いで討ち死にしていたのかもしれません。

また、秀吉は世論を味方につけ、向こうから戦いを仕掛けさせることにも長けており、その辺りの展開も、この作品の読みどころとなっています。

夢のまた夢(1)-津本陽
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