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下天は夢か(1)

父信秀の病死により家督を継ぐことになった織田信長が、周囲を見回せば敵ばかりの状況で、謀略により尾張下四郡を手中に収めます。迫りくる今川義元の大軍にどうすれば勝利できるのか、孤独の中で考え続ける信長の心情が興味深く描かれています。
 
 

主な登場人物

あらすじ

天文18年(1549年)春。

前年11月から病床に伏す父信秀のことを思い、寝転がる織田信長の姿が、那古屋城二の丸の寝床にありました。

尾張下四郡の守護代織田大和守の家老であった信秀には、東に今川氏、西には美濃の斎藤道三と油断ならぬ相手がいる状況。斎藤とは、道三の愛娘である帰蝶(濃姫)と信長の縁組により、同盟の関係が続いていたものの、いつ敵となるかわかりません。

そのような中、信秀は16歳になった信長に織田家を継がせることにしていました。

信秀が亡くなって3年間、信長は目立った行動をせず兵を養います。東の今川義元が動く前に尾張下四郡を手中に収めなければならない状況にある信長。彼の敵は外だけでなく身内にも潜んでいました。蜂須賀小六(正勝)や前野将右衛門(長康)が率いる川並衆を味方に付けた信長は、武力だけでなく調略によっても次々と隣国を手に入れ、やがて尾張下四郡を制圧します。

しかし、この間に舅の斎藤道三が彼の長男の義龍によって討ち取られたり、弟の信行の命を自らの手で奪わなければならなかったりと、信長にとってつらい出来事も起こっていました。

永禄3年(1560年)5月1日に今川義元が全軍に出兵の令を下しました。2万8千の今川勢に対して織田軍は3千の兵力。圧倒的不利の状況で、天を味方につけた信長は、尾張から今川勢を退けることに成功します。

信長の次なる目標は美濃の斎藤でした。どんなに攻めても思った戦果をあげることができない織田軍。その活路を開いたのは木下藤吉郎(豊臣秀吉)でした。

読後の感想

織田信長を主人公にした作品です。

この作品では、登場人物が、名古屋弁で会話をしています。それが、読み手に現実感を持たせ、物語に集中させてくれます。

1巻の前半では、信長が、父信秀の死から尾張下四郡を手に入れるまでが描かれています。自分の周りは身内とは言え、油断を許せない者たちばかり。気持ちの休まらない日々の中で、彼が落ち着けるのは、吉野と二人でいる時間だけ。

織田信長を描いた時代小説では、多くの場合、信長と濃姫との関係が描かれますが、「下天は夢か」では、濃姫はほとんど登場しません。この辺りが、他にない新鮮さを感じるところですね。

1巻の最大の見せ場は、桶狭間の戦いです。

身内のどこかに今川に通じている者がいるかもしれないという中で、信長は、孤独と戦い、いかにすれば10倍の兵力を擁する今川義元に勝てるかを考え続け、そして、勝利します。

また、この作品では、冷酷な信長が、戦死した味方を見て涙を流す場面も描かれています。このあたりの描写も、新鮮味があります。

 
 
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