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夢のまた夢(4)

小田原征伐後に天下を統一した秀吉の次なる野望は明国を征服することでした。朝鮮出兵を命じられた諸将は異国の地で優勢に戦いを進めます。しかし、冬の到来、民衆の蜂起など様々な問題が発生し、次第にその勢いに陰りが見え始めるのでした。

主な登場人物

あらすじ

秀吉は小田原征伐後、奥州を平定し京都に戻ります。

天下を統一し豊臣政権が確立されたものの、嫡子鶴松の誕生で政治は石田三成を中心に動くようになり、千利休の立場は微妙なものとなっていきます。そして、秀吉と不仲となった利休はついに切腹を命じられるのでした。

日本全土を掌中におさめた秀吉の次なる野望は明国を平定することでした。文禄元年(1592年)正月に秀吉は諸将に唐入り渡海の陣触れを発します。

海を渡った諸将は、破竹の勢いで朝鮮兵を撃退していきます。特に鉄砲の威力は凄まじく、朝鮮兵はなすすべくもなく敗退を繰り返します。

しかし、朝鮮側の李舜臣の水軍の活躍により兵站補給線が脅かされ、また厳しい冬の到来が日本の諸将に大きな打撃を与えるのでした。

読後の感想

第4巻では、豊臣秀吉が天下を統一した後、朝鮮に出兵するまでが描かれています。

力を持つにしたがって秀吉の傲慢な性格が表に現れてきます。その傲慢さから、ついに秀吉は千利休に切腹を命じてしまいます。千利休が、一言、秀吉に詫びを入れれば切腹にまでは発展しなかったのでしょう。しかし、利休が頑固だったため秀吉も折れるわけにはいかず、切腹を命じるしかなくなります。

独裁者を怒らせると危険だと千利休はよく理解していたのですが、それでも秀吉に死を命じられたのですから、独裁者とうまくつきあうのは難しいのでしょう。

第4巻で最も紙数が割かれているのが朝鮮出兵です。豊臣秀吉を主人公にした物語では、朝鮮出兵の前までに多くの紙数を割いているものばかりですが、夢のまた夢は朝鮮出兵に重点が置かれていると言っても過言ではありません。

未知なる敵との戦いは持っている兵器に差が出やすく、朝鮮側は日本の鉄砲に苦戦します。性能の良い鉄砲を大量に持っていた日本の兵士たちは最初は優勢でした。しかし、物資の輸送、寒い冬、民衆の蜂起など様々な問題が一気に持ち上がると日本の諸将は苦戦を強いられ始めます。

朝鮮出兵は、秀吉の征服欲が大きく取り上げられますが、朝鮮側の外交にもまずい点がいくつもありました。この辺りも、第4巻で詳しく描かれています。

夢のまた夢(4)-津本陽
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