龍馬(5)
龍馬が率いる海援隊は、大洲藩から借り受けたいろは丸で航行中、紀州藩の明光丸と衝突します。事故の原因は海援隊にあったものの、龍馬は巧みな交渉術で窮地を逃れました。薩摩藩が主導する武力討幕が目前に迫る中、土佐藩は、それを阻止するため、龍馬と後藤象二郎が考えた大政奉還を徳川慶喜に建白するのでした。 |
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主な登場人物
あらすじ
薩摩藩が持つ「いろは丸」を大洲藩が購入する際、間に入った龍馬は、三万両の値打ちしかない船を四万二千両で売却しました。そして、龍馬は、大洲藩の藩士たちに船の操縦をするための演習をする約束をしました。
しかし、京都政界が不安定になってきたため、龍馬はすぐに演習を始めることができず、大洲藩士たちは不満を持ち始めます。
慶応3年(1867年)となり、幕府の力が衰えてくると、薩長の勢いが増し、土佐藩もまた時流に乗り遅れまいと脱藩した龍馬に後藤象二郎が接近します、そして、龍馬は中岡慎太郎とともに脱藩の罪を許されました。
後藤は、大洲藩にいろは丸を長崎から大坂までの一航海だけ借り受け、その操船を龍馬が率いる海援隊が引き受けることになりました。
いろは丸は、大坂に向けて出港。しかし、航海中の夜、紀州藩の明光丸と衝突する事故が発生しました。いろは丸の乗員は全員救助されましたが、船は沈没し積荷も海に沈んでしまいました。
多額の損害を出した龍馬は、事故の原因が紀州藩にあることを認めさせるために知恵を絞ります。そして、交渉の結果、紀州藩から多額の賠償金を受け取ることに成功しました。
いろは丸事件が解決したのも束の間、薩摩藩が主導する武力討幕が進みつつありました。土佐藩は、それを阻止すべく、徳川慶喜に大政奉還を建白するのでした。
読後の感想
龍馬の最終巻です。
いよいよ倒幕が現実のものとなり、後藤象二郎が龍馬とともに考えた大政奉還を徳川慶喜に建白します。大政奉還は、坂本龍馬が関わった政治の中で、薩長連合と同じくらい有名なものです。
そのため、坂本龍馬を描いた作品では、大政奉還に重点が置かれることが多いですが、本作では、それよりも、いろは丸事件の方が読みごたえがあります。
いろは丸事件は、大洲藩が所有するいろは丸を海援隊が操船している時、紀州藩の明光丸と衝突した事件です。事件は夜に起こりました。夜の航海ではブープランプを点けるものですが、いろは丸には、最初からブーフランプがありませんでした。
対する明光丸は、ブーフランプを点灯していました。暗闇から突如現れたいろは丸を明光丸は避けようとしましたが、いろは丸が明光丸が避けようとする方向に舵を切ったため衝突しました。
事故の原因は、明らかにいろは丸側にあります。
事故の責任が、いろは丸にあることを認めると龍馬は切腹しなければなりません。そのため、龍馬はどうにかして明光丸に落ち度があったことを認めさせようとします。
最終的にいろは丸事件は、紀州藩が賠償金を支払うことで決着しました。いろは丸事件は、紀州藩に落ち度があったことになっていますが、真実は海援隊側にあったのです。しかし、龍馬の巧みな交渉術によって、紀州藩が賠償金を支払わざるを得なくなりました。
最終巻で龍馬は暗殺されます。その下手人は、見廻組の今井信郎というのが通説です。しかし、いろは丸事件が直前に起こっていることから、犯人は紀州藩だという噂があり、実際に海援隊の陸奥宗光らが、龍馬が暗殺された後、紀州藩の三浦休太郎を襲撃する天満屋騒動が起こっています。
本作の最後では、作者の津本陽さんが、龍馬がどのように暗殺されたのかを検証しており、こちらも興味深いです。
また、龍馬を待ち続けるおりょうの心情からも目が離せません。
龍馬(5)-津本陽 |
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