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幕末新選組

新選組隊士の永倉新八を描いた作品。神道無念流の剣の達人であった永倉新八が、幕末の京都を舞台に活躍します。新選組が大きくなるにつれて湧き上がってくる近藤勇に対する不満、藤堂平助との友情、維新後の暮らしなど、一人の新選組隊士の生涯を知ることができます。

主な登場人物

あらすじ

いたずら好きの栄治は、近所の子供たちと剣術ごっこをして、相手にひどいコブを作らせることがありました。

栄治は、やがて神道無念流の岡田十松道場に通い、18歳の時に本目録を受け、道場でも屈指の腕となります。この栄治が、幕末の動乱期に新選組隊士として得意の剣をふるって活躍した永倉新八です。

19歳で家を飛び出した新八は、市川宇八郎とともに武者修行の旅に出て、剣の腕を磨きます。やがて23歳となった新八は、近藤勇が牛込に構える試衛館道場に出入りするようになり、文久3年(1863年)2月に道場の者たちと供に幕府が募集する浪士隊に応募し京都へと旅立ちました。

京都に到着した新八たちは浪士隊から脱退します。そして、芹沢鴨一派と共に新選組を結成し、会津藩の庇護のもと京都の治安維持に勤めます。ある時、江戸にいた頃から面識のあった岸淵兵介から長州藩の浪士たちの情報を聞かされた新八は、近藤勇にそれを告げました。これがきっかけとなり、新選組は池田屋に集まっていた浪士たちを捕縛、その後、報復のために京都に攻め入った長州藩兵との戦いでも活躍しました。

伊東甲子太郎の入隊によって組織が大きくなった新選組でしたが、内部でのいざこざが絶えません。やがて、伊東甲子太郎とその一派が新選組を離脱。後に彼らとの大規模な抗争に発展し、新八は親友の藤堂平助と剣を交えることになります。

慶応4年(1868年)1月3日に勃発した鳥羽伏見の戦いから敗走の日々が始まり、やがて、新八は新選組を去るのでした。

読後の感想

新選組隊士の永倉新八の生涯を描いた作品です。

新選組作品というと、近藤勇、土方歳三、沖田総司が主役となっているものが多いのですが、幕末新選組では、脇役として描かれてばかりの永倉新八が主人公という点で新鮮味があります。

永倉新八は、近藤勇を慕っていました。でも、新選組が大きくなるにつれて近藤勇の態度も、少しずつ横柄なものになっていくのに不満を感じていきます。仲の良い原田左之助と影で近藤勇の悪口を言う描写は、当時の新選組隊士の感情を表現したものなのでしょうね。

また、藤堂平助との友情を描いた場面も幕末新選組特有の描写です。永倉新八は、最初は藤堂平助を嫌っていました。恋敵ということもありましたし、彼のすました感じが受け付けなかったんですね。でも、池田屋事件を境に仲良くなります。しかし、最後は敵味方となって戦わなければならなかったことは、時勢とは言え、なんとも残酷なものです。

後半も残り少なくなって、明治維新後の永倉新八が描かれています。維新後の新選組隊士の暮らしを描いている点でも、他の新選組作品とは一味違っていますね。

幕末新選組-池波正太郎
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