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幕末遊撃隊

幕臣伊庭八郎が、鳥羽伏見の戦いから函館五稜郭まで戊辰戦争を戦い抜く物語。負けるとわかっている戦いに身を投じる伊庭八郎を料理人の鎌吉や吉原の花魁小稲が助けます。八郎の命をつけ狙う杉沢伝七郎の生き様も見逃せません。

主な登場人物

あらすじ

心形刀流(しんぎょうとうりゅう)の伊庭道場の跡継ぎである幕臣の八郎は、吉原からの朝帰りに門弟の杉沢伝七郎と出会います。

杉沢は、吉原通いをする八郎をこらしめるため、彼に立ち合いを求めました。これに応じた八郎は、一突きで杉沢を倒します。以後、杉沢は恨みを晴らすために八郎の命を狙うようになるのでした。

幕府の第2次長州征伐に際して、八郎は14代将軍徳川家茂に従い、父の軍平とともに上洛します。しかし、慶応2年(1866年)7月20日に家茂が21歳の若さでこの世を去ると、八郎は、その遺体とともに江戸に戻ることになりました。

江戸に戻った八郎は伊庭道場で稽古に励みます。ある日、本山小太郎が、幕府が遊撃隊を創設する話を八郎の耳に入れます。そして、八郎は遊撃隊に参加しました。

慶応3年の初夏。八郎は再び江戸を発ち大坂に向かいます。

15代将軍徳川慶喜は政権を朝廷に返上する大政奉還を行いましたが、薩長との武力衝突が避けられない状況となり、慶応4年正月に鳥羽伏見の戦いが起こります。八郎も、この戦いに参加しましたが、奮闘の甲斐なく大坂に退却。

江戸に引き上げた八郎は、遊撃隊を率いて箱根で官軍と戦います。重傷を負った八郎は、榎本武揚の後を追い、函館五稜郭へと向かうのでした。

読後の感想

遊撃隊の伊庭八郎を主人公にした作品です。

政局が不安定となり、幕府から薩長に政権が移行しようとする中、負けるとわかっている戦いに参加しようとする伊庭八郎の心情が随所で描かれています。

伊庭八郎が最後まで官軍と戦うのを助けた人物が2人登場します。1人は吉原の花魁小稲で、もう1人は料理人の鎌吉です。この2人が登場することで、伊庭八郎の人生がとても輝かしく感じられるようになっています。

また、伊庭八郎の命を狙う杉沢伝七郎の存在も見逃せません。この物語で杉沢伝七郎が登場することで、世の中の大きな動きと関係なく生きた者が、どんな時代にもいたのだと想像させます。

幕末遊撃隊-池波正太郎
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