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人斬り半次郎(賊将編)

徳川家茂の死、孝明天皇の崩御が相次ぎ、幕府の勢いは急速に衰えます。武力討幕に持ち込みたい薩長両藩は、15代将軍徳川慶喜に無理難題を押し付け、遂に両軍は鳥羽伏見で激突。中村半次郎も愛刀和泉守兼定を振るい奮闘するのでした。

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主な登場人物

あらすじ

慶応2年(1866年)に14代将軍徳川家茂が早逝し、孝明天皇も崩御したことで幕府の勢威は急激に衰えていきました。

そして、慶応3年10月に15代将軍徳川慶喜が大政奉還を決意し、江戸幕府は終焉します。しかし、武力討幕を推し進めたい薩摩藩と長州藩は、岩倉具視とともに御所で行われた会議で徳川慶喜の辞官納地を要求し、慶応4年正月に旧幕府と薩長軍が京都の鳥羽伏見で激突しました。

中村半次郎は、愛刀和泉守兼定が刃こぼれするほどに幕府兵を斬りまくり、薩長軍は幕府軍に勝利します。

さらに江戸城の無血開城、会津戦争を経て薩長を中心とする新政府は、新時代の幕を開けました。

明治政府で陸軍少将となった中村半次郎は名を桐野利秋と改め、得意の絶頂にいました。しかし、西郷隆盛が征韓論争に敗れると、桐野利秋は西郷とともに鹿児島に還るのでした。

読後の感想

人斬り半次郎の最終巻です。

剣一本で出世してやると思い続けてきた中村半次郎は、倒幕を成功させ、明治政府では陸軍少将となりました。名も桐野利秋と改め、東京では豪華な暮らしをできるようになります。

しかし、革命なった後の新政府の官吏の浮かれ方に利明の師である西郷隆盛は危惧します。西郷が腐敗した政府を見かねている時、利明のその後に大きな影響を与える征韓論争が持ち上がります。

征韓論に反対の立場の大久保利通や岩倉具視は、西郷隆盛の朝鮮渡航を認めません。そして、政府に失望した西郷は鹿児島に帰郷し、利明も職を辞して西郷の後を追います。

桐野利秋は、乱世の英雄と言えるでしょう。しかし、政治的な能力に欠けていたため、やがて西南戦争を引き起こし賊将となってしまいます。西郷隆盛は不平士族の暴発を防ぐために鹿児島に戻ったのですが、桐野利秋にはその思いが伝わらなかったのでしょう。

本作で描かれている桐野利秋は、とても溌剌としています。「人斬り」の異名を持った幕末の剣士にはどこか暗い影があるのですが、桐野利秋にはそのような冷たい印象を感じません。

桐野利秋は西南戦争で戦死するのですが、その死にさえもどこか爽快に感じるものがあります。

人斬り半次郎(賊将編)-池波正太郎
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