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新・平家物語(5)

伊豆で十数年間流人として暮らしていた源頼朝は、北条氏の長女政子に近づくとともに文覚と面会し、打倒平家に向けて少しずつ動き始めます。しかし、政子は平家の山木兼隆に嫁ぐこととなり、頼朝の挙兵は遠のくことに。ところが、政子の兄宗時が嫁入りの行列を襲い、政子を奪い去るのでした。

主な登場人物

あらすじ

坂東を旅した源義経は、奥州平泉に到着し、藤原秀衡と面会しました。

一方、源氏の嫡流である源頼朝は、伊豆の配所で十数年、流人としての生活を送っていました。頼朝は、北条時政の娘の政子に近づき北条の力を得ようとします。また、同じく伊豆に流された文覚と会見し、打倒平家の思いを強くしていきました。

北条では、山木兼隆から政子との縁談の話が持ち込まれます。北条時政は子の宗時にそれを伝えました。すると、宗時は、政子が頼朝と恋仲であることを時政に告げます。平家全盛の世で、源氏の流人である頼朝に政子を嫁がせることは、北条の立場を危ういものとすることから、事実を知った時政は怒り出しました。

家の事情を察した政子は、山木兼隆に嫁ぐ決心をします。そして、嫁入り当日。宗時は、時政の命を受け、密かに嫁入りの行列を襲い政子を奪い去るのでした。

この頃、都では、平家転覆を画策する鹿ケ谷の変が起こり、平清盛は連座した者たちを次々と処罰していきました。

読後の感想

平家の栄華が続く中、伊豆に流された源頼朝は、十数年間、目立たぬ暮らしをしていました。第5巻では、前半は伊豆の源頼朝を中心に物語が進みます。

平家打倒のために挙兵するには、頼朝ひとりの力では不可能です。坂東で力を持った豪族を味方に引き入れることが、挙兵のための最初の試練でした。

頼朝は、北条氏の長女政子に近づき、北条の力を借りようと考えていました。しかし、時悪く、政子は平家の山木兼隆と婚約することになります。このまま、政子が山木に嫁げば、頼朝の挙兵は実現しません。この窮地を救ったのは、政子の兄の宗時でした。

宗時は、嫁入りの行列を襲い、政子を奪い姿をくらまします。しかし、山木兼隆は、それが北条の手によるものだと見抜いていました。こうなると、北条は、頼朝を担ぎ挙兵する以外にありません。

後半では、都の平家を中心に物語が進みます。いつになっても、山門の強訴は繰り返され、都では大火災が起こりました。

ここで、武蔵坊弁慶が登場します。弁慶と言えば、五条大橋で平家の公達から刀を奪い、千本目の刀を奪い取ろうとした相手が牛若丸だったという話が有名です。でも、新・平家物語では、弁慶はそのようには登場しません。

また、都では、平家を転覆する計画が行われた鹿ケ谷の変が起こりました。栄華を極める平家への不満が高まりつつあります。

新・平家物語(5)-吉川英治
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