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新・平家物語(3)

平治の乱を起こした藤原信頼と源義朝でしたが、合戦中に清盛の計略にはまり御所から追い出されました。行き場を失った義朝は、戦場を離脱し、東国に逃れようとしますが、途中で命を失います。乱後、平家の力が強まると、清盛は宋との貿易に力を入れ始めるのでした。

主な登場人物

あらすじ

保元の乱の後、権勢を振るった信西を追い落とした藤原信頼は源義朝とともに平治の乱を起こしました。

一方、平清盛は熊野から六波羅に戻ると戦支度をし、義朝らを御所の外へ出すことに成功します。

帰る場所を失った義朝は、清盛に一騎打ちをけしかけます。しかし、清盛はこれに応じません。行き場を失った義朝は、ついに兵をひき東国に落ち延びることにしました。

雪の中、東に進む源氏の武者たち。途中、悪僧らに襲われながらもどうにか安全な場所まで落ち延びることができた義朝でしたが、長田忠致の裏切りに遭い命を落としました。

義朝とともに落ち延びた嫡男の頼朝は、途中で父たちとはぐれ平宗清に捕らえられます。清盛は、頼朝を処刑しようとしますが、継母の池禅尼や重盛らの説得により、命を助け伊豆に流すことにしました。

また、義朝の妻の常盤御前も、3人の幼い子らとともに出頭し命乞いをします。清盛は、3人の子を処刑するつもりでしたが、頼朝の命を助けた手前、そうできず出家させることにしました。

平治の乱が終わり、世の中が落ち着き始めると、清盛は若かった頃の念願であった宋との貿易を始めることにしました。しかし、後白河上皇と二条天皇の関係が次第に悪くなり、清盛を悩ませるのでした。

読後の感想

3巻では、平清盛が平治の乱に勝利し、平家の力が強まっていきます。

平治の乱の後、捕らえられた源頼朝は、処刑される身であったものの、池禅尼が、若くしてこの世を去った家盛と似ていることを理由に清盛に命乞いをしたことがきっかけで処刑されずに済みます。牢内での頼朝の態度は神妙なもので、亡き父たちの卒塔婆を書く姿などが、人々の同情を買いました。

一方で、義平のように捕えられた後に処刑された者もいましたが、常盤御前の3人の子も命を助けられています。

3巻の前半では、頼朝の助命と常盤御前の逃避行に多くのページを割いており、3巻全体としての読みどころとなっています。

平治の乱後、世の中が落ち着きだすと、清盛は宋との貿易を始めようとします。五条の伴卜や金売り吉次といった商人も登場し、物語の流れは政治から経済へと変わり始めます。

しかし、二条天皇が近衛天皇の后であった多子を自分の后にしようとしたことから、後白河上皇との関係が悪化し、再び政治の世界がざわつき始めます。

経済と政治の両方に関わる清盛の活躍は4巻以降に続きます。

新・平家物語(3)-吉川英治
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