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平の将門

平安時代に関東で反乱を起こした平将門を主人公にした作品です。世間のことを何も知らずに上京する将門に接近してくる八坂の不死人の存在が、彼の運命を変えていきます。感情を押し殺さない将門の姿から当時の人々の生き方を知ることもできます。

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主な登場人物

あらすじ

相馬の小次郎の父の平良持は、小次郎が幼い時に亡くなりました。

そのため、良持が支配していた坂東の広大な土地は、彼の兄の国香(くにか)と、良兼、良正の2人の弟に管理を頼み、小次郎が成人した時に還して欲しいと遺言をしていました。

小次郎が14歳になると叔父たちは彼を疎ましく感じ始め、時には命を狙うこともありました。そして、叔父たちは小次郎が16歳になった時、都の藤原忠平に仕えるように言い渡します。

都に入る直前、小次郎は彼の運命に深くかかわることになる八坂の不死人(ふじと)と出会います。また、都では、将来対立することとなる従兄弟の平貞盛と繁盛の兄弟とも知り合います。

小次郎は、29歳になるまでの13年間を都で働き、その間に海賊の藤原純友と親交を深めたり、勉学や乗馬にも精を出し、たくましくなりました。

故郷の坂東に戻った小次郎を将頼、将平、将文、将武の4人の弟が出迎えます。そして、彼は帰国披露目をさかいに将門と名乗るようになりました。

将門の帰国後も叔父たちとの仲は良くなることはなく、父の良持が彼らに預けた田領をめぐって争いが起こります。やがて、親族間の争いは激しさを増します。叔父の国香の死、 最愛の妻である桔梗との別れ、平貞盛の朝廷への讒言。将門の前途は次第に怪しくなっていきます。

そして、朝廷は本格的に将門を叩くため、藤原秀郷(ひじわらのひでさと)に将門討伐を依頼するのでした。

読後の感想

天慶の乱を起こした平将門を描いた作品です。

平将門は、朝廷に刃向った悪人という評価を長い間受けていましたが、最近では、それも見直されてきていますね。

吉川英治の「平の将門」は、まだ、原始的な人間の営みが残っていた平安時代の関東を舞台にしています。現代人は、感情をあまり表に出しません。でも、この時代の人々は、怒りや悲しみといった感情を押し殺さず、表に出すことが多かったようで、作品中でも、将門の怒りや悲しみが、表に出る場面が何度も描かれています。

作中で、重要な役回りを演じているのが、八坂の不死人です。不死人は、公卿ばかりが栄えている世の中に反感を抱いており、南海の海賊の藤原純友と親交を深めていました。その中に将門も加えることで、不死人は、自らの野望を実現させようとします。

世間のことを何も知らない将門に知恵を付けていき、最後は、関東で乱を起こさせる不死人。

作品中に彼が登場することで、将門の純粋さがより際立っています。

平の将門-吉川英治
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