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新・平家物語(16)

六波羅の北条時定が懸命に捜索するも、義経の足取りは全くつかめません。頼朝の誤解を解こうと後白河法皇に接近するも失敗した義経は、ついに奥州の藤原秀衡を頼ることを決意します。しかし、安宅ノ関で富樫泰家に正体を見破られ、絶体絶命の危機に陥るのでした。

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主な登場人物

あらすじ

義経の捜索を続けるも一向に足取りを掴めない六波羅の北条時定。

一方、義経は、大原御幸中の後白河法皇を頼ろうとしますが、六波羅の警備が厳しく法皇に近づくことができません。

なおも、六波羅の捜索が続き、源行家、伊豆有綱、佐藤忠信らが次々と命を落としていきます。

六波羅だけでなく、金売り吉次も義経を探し回ります。奥州の藤原秀衡を頼るよう義経に進言するつもりでしたが、そこには、商売人としての吉次の思惑がありました。

堅田党にかくまわれている義経主従でしたが、いよいよ六波羅に居所を掴まれそうになります。義経は、藤原秀衡を頼ることを決意し、京都の仁和寺宮に拝謁した後、奥州に旅立ちました。

畿内からの脱出に成功した義経主従。しかし、安宅ノ関で、富樫泰家に正体を見破られるのでした。

読後の感想

新・平家物語の最終巻です。

本作は、平治物語、保元物語、平家物語、源平盛衰記、義経記、吾妻鏡を参考にして、平清盛の青春時代から源頼朝の死後までが描かれた長大な作品です。

栄華を極めた平家が源氏によって滅ぼされ、源氏もまた北条に幕府を乗っ取られました。源平合戦の勝者も敗者も滅び、ただ、庶民に苦痛を与えただけの時代。

主人公は、最初は平清盛でしたが、彼の死後は源義経に変わりました。物語の最初から最後まで登場した人物は、ほとんどいません。

物語全体を通しての主人公が誰だったのかを考えると、阿部麻鳥だったように思えます。最初から最後まで登場したのは、阿部麻鳥の他には文覚と西行くらいしかいません。その文覚と西行も、途中、登場機会が少なくなりましたから、物語全体の主人公は阿部麻鳥と言えそうです。

最初は、崇徳上皇に仕えていた阿部麻鳥でしたが、上皇が讃岐に流された後は医師となり、やがて常盤御前に仕えていた蓬と結婚します。そして、庶民を治療し、孤児を育てながら、貧しい生活を続けました。

本作に阿部麻鳥が登場することで、源平合戦を庶民の目線からも見ることができるようになっています。

また、金売り吉次と五条の伴卜という2人の商人の存在も、本作では重要な位置にあります。商人と言っても、2人は死の商人であり、戦によって富を増やしていきます。戦乱で苦しむ庶民がいる一方で、肥え太る商人もいることを読者に教えてくれます。

本作を読み終わると、権力を握ることや大金持ちになることが人の成功や幸せではなく、ただ普通に生活できることこそが真の幸福なのだと実感しますね。

新・平家物語(16)-吉川英治
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