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乱紋(下)

2番目の夫豊臣秀勝と死別したおごうは、姉のお茶々と豊臣秀吉の命により徳川家康の子の秀忠に嫁がせられます。関ヶ原の戦い以後、敵味方となったおごうとお茶々。京極家に嫁いだ次女お初を挟み、大坂で姉妹の最後の戦いが始まります。

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主な登場人物

あらすじ

2番目の夫豊臣秀勝と死別したおごう(崇源院)は、岐阜城から退去し京都で暮らすことになりました。

おごうが亡き夫秀勝の子を出産するのと時を同じくして、姉のお茶々(淀殿)も豊臣秀吉の子、お拾(豊臣秀頼)を出産。我が子の誕生を喜ぶ秀吉は、甥の秀次が邪魔になり一族もろとも死に追いやります。

秀頼の行く末を案じる秀吉とお茶々は、さらにおごうを徳川家康の子の秀忠に嫁がせることを決定しました。豊臣と徳川との関係が悪化した場合でも、おごうを徳川に嫁がせておけば豊臣家の安泰が保障されると考えたからです。

秀忠に嫁いだおごうは、お千、お珠、お勝と3人の娘を出産。しかし、待望の男児はなかなか生まれません。

秀吉がこの世を去ると、徳川と豊臣との関係が悪化し始めます。そして、慶長5年(1600年)9月に関ヶ原の戦いが勃発。この戦に勝利した家康は、慶長8年に征夷大将軍となり、豊臣家と徳川家の関係が逆転します。

この頃、おごうは4番目の娘を出産。長女のお千は秀頼に嫁ぎ、4番目の娘は京極高次に嫁いだ姉のお初(常高院)に養子として差し出すことになりました。

自分の娘たちを次々に嫁がせていたおごうに待望の男児が誕生。しかし、徳川と豊臣の関係がさらに悪化し、おごうを取り巻く環境は不安定になっていくのでした。

読後の感想

乱紋の最終巻です。上巻と同じく、物語は、おごうの侍女のおちか目線で進んでいきます。

お茶々、お初、おごう。浅井三姉妹の人生は三者三様ですが、その中で最も悲劇的だったのは長女のお茶々だったでしょう。

天下人の秀吉に嫁いだ時は、三姉妹で最も豊かな暮らしをしていたお茶々。彼女と対照的に三女のおごうは、二度の離縁を経験し、その身はいつも時の権力者の言いなりでした。

2人と比べると、次女のお初は名門の京極家に嫁ぎ、最も平穏な日々を送っていたことでしょう。ところが、乱紋では、このお初が味のある役回りを演じます。

気品が高く嫉妬深い性格に描かれたお初は、大坂の陣で徳川方の使者として大坂城に乗り込み、姉のお茶々に降伏することを説得します。敵味方に分かれた姉妹が対面する場面は涙を誘いそうなものですが、乱紋では、2人のプライドの高さと嫉妬深さがぶつかりあい、感動の再会ではありません。

戦国の世でも気高く生きようとした2人の姉。三女おごうは、どちらにも似ていません。しかし、言葉少なではありますが、乱世を強く生き抜こうとしたのは、2人の姉ではなくおごうだったのかもしれませんね。

侍女のおちかを陰ながら助けていた博多商人のちくぜんも、上巻同様に活躍しています。

乱紋(下)-永井路子
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