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男の一生(下)

小谷城にたてこもる浅井長政を織田信長の軍勢が囲みます。羽柴秀吉のもとで働く前野将右衛門は、小谷城の市と3人の娘を哀れに思います。秀吉の天下となり、朝鮮に出兵した将右衛門。帰国した時、現地の日本軍の疲弊を秀吉に訴えようとしますが、秀吉の逆鱗に触れることを恐れ口に出せませんでした。

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主な登場人物

あらすじ

織田信長が、姉川の戦で浅井・朝倉に勝利して2年後。織田信長は、浅井長政の居城小谷城を監視するため、虎御前山に砦を築き柵をめぐらしました。

羽柴秀吉に仕える前野将右衛門(長康)と蜂須賀小六(正勝)は、手のものを連れ、虎御前山に駐屯します。二人は、小谷城にいる市が、夫の浅井長政と兄の織田信長と戦うことを哀れに思っていました。

浅井長政は、朝倉義景が援軍を率いて助けに来るのを待ちます。しかし、朝倉義景は、小谷城が持ちこたえられないと判断し退却し始めます。それを見た織田信長は、朝倉義景を猛追し討ち取りました。

もはや勝ち目がなくなったと認めた浅井長政は、市と3人の娘を織田信長に引き渡すことを決断。そして、4人は羽柴秀吉の陣に送られ、将右衛門が監視することになりました。

その後も、羽柴秀吉は織田信長の命に従い、将右衛門たちとともに戦場で活躍します。秀吉は、家臣たちをねぎらうことを忘れず、戦いが終わった後は、無礼講を許し、大いに飲み、大いに笑い合いました。

時は過ぎ、太閤となった秀吉は、朝鮮に出兵します。

年老いた将右衛門も出陣し、諸将とともに朝鮮や明の軍勢と苦しい戦いを強いられました。その頃の秀吉は、かつてのように家臣たちを労わることはなくなり、我が子を可愛がるだけの日々を過ごしていました。

疲れ果てて帰国した将右衛門は、隠居し前野家を子の景定に任せることを決め、秀吉に願い出ようと考えていました。しかし、秀吉が、甥の関白秀次を補佐してくれるよう将右衛門に懇願したため、隠居は取りやめとなります。

これが後の将右衛門の運命に大きな影響を与えるのでした。

読後の感想

男の一生の最終巻です。

天下を統一した豊臣秀吉は、以前とは変わり独裁色を強めていきました。家臣たちを労う心をなくした秀吉に従わない者は、次々と処刑されていきます。

秀吉が天下を統一する頃、将右衛門は、千利休、高山右近、細川幽斎らと出会います。彼らとの出会いは、将右衛門の人生に大きな影響を与えました。

秀吉に切腹を命じられた千利休、キリスト教を棄てることを拒否し領地を没収された高山右近。彼らは、成り行きをただ受け入れていきます。

朝鮮から帰国した将右衛門は、現地の兵士たちの苦境を秀吉に報告しようと誓うものの、それを面と向かって言うことができませんでした。千利休も佐々成政も、秀吉に口出ししたことで命を落としていたことが、将右衛門を黙らせたのです。

本作の後半は、淀殿の視点からも物語が進んでいきます。父の浅井長政も母の市も、秀吉に殺された淀殿。彼女は、父母の仇を取るため、秀吉の側室となり、子を産みます。

いずれ我が子が、豊臣家を継ぎ天下を握ることを期待する淀殿でしたが、秀吉の甥の秀次は邪魔な存在でした。我が子捨丸の将来にとって障害となる者は早いうちに排除しておきたい淀殿の思惑通り、秀次は切腹に追い込まれ、彼を補佐していた前野家も処分されることになりました。

男の一生は、反逆決戦の時と同じく、武功夜話に基づいて物語が進んでいきます。これまでの織田信長や豊臣秀吉が登場する作品とは、違った視点が、読者に新鮮味を与えます。

織田信長が美濃を攻略できたのも、豊臣秀吉がその時に活躍し出世できたのも、蜂須賀小六と前野将右衛門が率いる川並衆の助けがあったからです。もしも、二人が秀吉の家臣とならなければ、美濃の攻略にもっと時間ががかかったでしょうし、秀吉も世に出ることはなかったかもしれません。

男の一生(下)-遠藤周作
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