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男の一生(上)

織田信秀が亡くなると、尾張では織田家の内紛が激しくなり、前野小右衛門と蜂須賀小六は織田信長に味方しました。尾張を手中に収めた織田信長は、今川義元を桶狭間で討ち取りましたが、小右衛門と小六には恩賞が与えられませんでした。信長に対する不満があったものの、彼に仕える木下藤吉郎の人柄に惚れ込んだ二人は、やがて、藤吉郎の下で働くようになるのでした。

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主な登場人物

あらすじ

織田信秀に仕える前野家に生まれた小右衛門は、14歳の時にあゆと夫婦になりました。

織田信秀が亡くなると、尾張では織田家の内紛が起こり、前野家も騒動に巻き込まれていきます。しかし、小右衛門は、まだ身持ち定まらず、妻がある身でありながら、生駒家の吉乃に恋をしてしまいます。

生駒家に出入りするようになった小右衛門は、後の彼に大きな影響を与える木下藤吉郎(豊臣秀吉)と出会いました。生駒家には、織田信秀の後を継いだ信長も通っており、やがて、信長は吉乃を側室とします。

織田家の内紛に巻き込まれた前野家は、親子で敵味方となり、小右衛門は、兄貴分の蜂須賀小六(正勝)とともに生駒家の守りを固めることになりました。

織田家内の戦いは信長の勝利となり、蜂須賀小六は褒美をもらいました。そして、小右衛門も、後に信長に仕えることになります。しかし、小右衛門の奉公は長くは続きませんでした。

今川義元が、尾張に侵攻するとの噂が流れると、小右衛門と小六は、織田信長の運命もこれまでかと思うようになります。野武士の彼らは、勝つ方に味方し褒美を得て暮らしていたので、今川に味方するつもりでいました。ところが、桶狭間で織田と今川の合戦が始まると、織田の形成が有利となり、小右衛門と小六は急ぎ織田に加勢しました。しかし、彼らの活躍は信長に認められず、恩賞を得ることはできませんでした。

織田信長が美濃攻めに取り掛かるころ、木下藤吉郎は、織田家で出世していきました。藤吉郎は、信長には運があると小右衛門と小六に言い、信長と敵対することだけは避けるように忠告します。

信長の美濃攻めが本格化していくと、木下藤吉郎は、小右衛門と小六に加勢を頼みに来ました。織田に分があると見た二人は、藤吉郎の人柄に惚れ込んでいたこともあり、彼の下で一働きすることとします。

そして、小六は、鵜沼城を無血開城させた木下藤吉郎の運にあやかってはどうかと小右衛門に提案し、二人は藤吉郎の家臣となるのでした。

読後の感想

前野長康を主人公にした作品です。

長康よりも将右衛門の名の方が、よく知られていますね。

前野長康は、以前はあまり知られていませんでしたが、武功夜話をもとに描いた歴史小説が出版されるようになってから、その名が次第に知られるようになってきました。

小右衛門(将右衛門)は、蜂須賀小六の弟分として、木下藤吉郎の出世に貢献します。木下藤吉郎が、羽柴秀吉となり、そして豊臣秀吉となって天下を統一できたのは、藤吉郎の才覚もありましたが、彼ら二人の働きがあったからだと言えるでしょう。

織田信長が美濃の斎藤を攻略できたのは、木下藤吉郎の働きがあったからこそ。しかし、藤吉郎が自分の才覚を思う存分発揮できたのは、蜂須賀小六と前野將右衛門率いる木曽川並衆の助けがあったからで、もしも、彼らが藤吉郎に味方しなければ、美濃攻略にもっと時間がかかったでしょうし、もしかしたら、美濃を攻略できなかったかもしれません。

さて、本作では、前野将右衛門の恋の行方も読みどころです。初恋の相手である吉乃は信長の妻となり、やがて若くしてこの世を去ります。その後に出会ったお栄は、吉乃とよく似ており、将右衛門は一目惚れします。

しかし、このお栄との出会いが、前野将右衛門を窮地に追い込むことになります。

男の一生(上)-遠藤周作
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