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反逆(上)

茨木城を乗っとったばかりの荒木村重が、織田信長を主君として選び、その下で戦国の世を生き残っていく姿を描いています。しかし、信長に対する劣等感から、村重は、ついに謀反を起こすことを決意。有岡城に立てこもる村重と妻の「だし」の運命は。

主な登場人物

あらすじ

元亀2年(1571年)8月に従兄弟の中川清秀と結び、和田惟政(わだこれまさ)や茨木重朝の連合軍を破って、茨木城を乗っとったばかりの荒木村重は、誰を主君として仕えればよいのか迷っていました。

主君候補と考えていたのは織田信長。村重は、配下の者を京都にやり、信長の情報を集めさせます。比叡山を焼き討ちしたこと、叔父の織田信光を清州を奪うために殺したことなど、その非情な行為を聞き、村重は信長を主人とするべきかどうか迷っていました。

迷う村重の背中を押したのは木下藤吉郎(豊臣秀吉)でした。摂津一国を与えるとともに信長の義理の妹の「だし」を嫁がせることを条件として提示された村重は、他に気になる点があったものの織田に従う決意をしました。しかし、信長と謁見した村重は、屈辱的な待遇を受け、それが一生の劣等感となります。

摂津一国を領した荒木村重は、その後も織田のために石山本願寺と戦いましたが、毛利輝元を後ろ盾とする一向宗門徒に苦戦します。長引く石山本願寺攻略。その間に上杉謙信が動き、松永久秀が謀反を起こし、織田信長は苦しい立場に立たされます。

信長に本願寺との和睦交渉を命じられた村重でしたが、不首尾に終わります。それに対して怒る信長。和睦交渉中に本願寺の顕如の人柄に魅かれた村重は、やがて主君への反逆を考え出します。

しかし、有岡城に籠城する村重に従兄弟の中川清秀も信頼していた高山右近も味方せず、次第に苦しい立場に追い込まれていくのでした。

読後の感想

歴史上の人物としては、あまり有名ではない荒木村重を主人公にした作品です。

この作品では、織田信長に道具のように使われる荒木村重、羽柴秀吉、明智光秀の心模様が、とても興味深く描かれています。特に秀吉は、信長に忠義を尽くしていたように描かれることが多いのですが、「反逆」では、信長に道具として使われるのに対して、彼もまた信長を道具として使い、出世していこうと企んでいるところが、他の作品とは一味違っています。

高山右近のキリシタンであるのに戦国の世を生きていくために戦をし、荒木村重を裏切らなければならない心の葛藤も見逃せません。

反逆(上)-遠藤周作
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