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決戦の時(上)

織田信秀が42歳で亡くなると、彼の弟たちが織田家を我が物にするために動き始めます。信秀の嫡男信長は、父の領地を譲り受ける正統な後継者であることを示すため叔父たちと戦います。しかし、弟の信行までが謀反を起こし、信長は強敵今川義元と戦う前に窮地に立たされるのでした。

主な登場人物

あらすじ

末森城で織田信秀が42歳で亡くなりました。信秀には嫡男の信長がいましたが、葬儀は3年後に延ばすことが織田家中で決定します。

信秀の領地は信長が引き継ぐべきところですが、信長を織田家の正統な後継ぎにするのはどうかといった意見が織田家中にはありました。信長の評判が良くないこと、そして、信秀の弟たちが織田の後継者になろうとしていることが、信長を後継ぎに認めない理由です。

信秀亡き後の信長の最初の敵は、他国の大名ではなく織田家の近親たちでした。その中でも、家臣の林通勝と柴田勝家は、信長の弟の信行を織田家の後継ぎにしようと画策しており、信長は孤立無援の状況にありました。

そんな時、今川義元が織田領内に侵攻し始めます。信長は、今川勢を追い払うために出陣しますが、弟の信行はなかなか戦場に駈けつけません。

劣勢となった信長でしたが、遅れて兵を進めて来た信行の助けにより、今川勢を退却させることに成功しました。

しかし、今川はその後も織田領をうかがう姿勢を見せ続けます。一方、信長は織田領内の統一を進め、やがて来る今川の大軍に備えます。

ところが、織田家では信行が謀反を起こし、今川と戦う前に信長は窮地に立たされるのでした。

読後の感想

織田信長を主人公にした作品です。

従来の織田信長を主人公にした作品では、信長公記をもとにしていることが多かったのですが、本作では、武功夜話を中心に物語が進んでいきます。

これまで、信長の正室として存在感を示してきた濃姫でしたが、本作では影が薄いです。武功夜話の記述では、信長の嫡男の信忠を産んだのは生駒家の吉乃とされているので、本作でも、濃姫よりも吉乃の方がよく登場します。

若き日の信長にとって、強敵は今川義元でした。今川が本気で尾張に侵攻すれば、織田家は難なく滅ぼされることを知っていた信長は、いかにして今川と戦うかを日夜考え続けていました。

しかし、信長の眼前の敵は、弟の信行や叔父たちでした。織田の家督を狙う彼らとの戦いに勝利しなければ、今川を迎え討つことはできません。叔父たちは謀略によって退けましたが、弟の信行とは手を取り合って織田家を守ることを選びます。ところが、信行に仕える林通勝が信行を織田家の当主にすることを画策したため、信長は弟と戦わざるを得ません。

若き日の信長にとって、今川義元が最大の敵だったことは言うまでもありませんが、その前に織田家中との戦いに勝利して自分が織田家の真の後継者であることを決定づけることが最初の関門でした。本作では、この辺りについて詳しく記述されており、若き日の信長の苦悩を知ることができます。

決戦の時(上)-遠藤周作
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