HOME > 作家別 > 遠藤周作 > 決戦の時(下)

 

決戦の時(下)

尾張に侵攻し始めた今川義元の大軍を信長はわずかな兵で迎え討ちます。籠城を献策する家臣達の意見には耳を貸さず、信長は乾坤一擲の秘策をもって今川義元を討ち取ります。美濃の攻略、上洛、浅井朝倉との戦い。木下藤吉郎や川筋衆の活躍で、信長の天下統一が近づきます。
 
 

主な登場人物

あらすじ

永禄3年(1560年)5月10日。今川義元の先発隊が西に向けて出発しました。

信長の兵力は3千。一方の今川の兵力は3万。信長は軍評定を開き、家臣は籠城を献策しました。しかし、信長は、他人事のように「はて、さて、如何したものか」と言うのみ。

信長には秘策がありました。しかし、事前に家臣に打ち明けると今川に洩れるかもしれないという危惧があり、胸中を明かしませんでした。

織田の砦が次々に今川に落とされ、ついに信長は出陣を命じます。今川に勝つには、義元の首を討ち取ることに集中すること。信長は兵たちにそれを命じ、雨の中、田楽狭間で休憩する今川勢を攻撃し、見事、義元の首を討ち取りました。

今川を退けた後の信長の敵は、美濃の斎藤竜興でした。しかし、信長は、なかなか美濃を攻略できません。そこで、木下藤吉郎(豊臣秀吉)に墨俣に砦を築くように命じます。藤吉郎は、蜂須賀小六(正勝)や前野将右衛門(長康)ら川筋衆の力を借り、2日で砦を完成させます。

墨俣に砦を築かれたことで動揺する斎藤竜興を信長は調略により美濃から追い出すことに成功。そして、近江の浅井長政に妹の市を嫁がせ、いよいよ、将軍足利義昭を奉じて上洛する準備が整うのでした。

読後の感想

決戦の時の最終巻です。

前半は桶狭間の戦いに多くの紙数が割かれ、後半では浅井・朝倉との戦いが中心になります。

信長は、足利義昭を奉じて上洛しますが、その障害となったのは、近江の六角と浅井でした。浅井は、妹の市を嫁がせて味方とし、六角は武力によって攻略します。

信長は、浅井長政の力量を高く評価していたため、市を嫁がせ味方にしました。しかし、浅井長政にとって、この婚姻は必ずしも喜べるものではありませんでした。

六角を攻略した信長の実力を目の当たりにすると、まともに戦える相手ではないと思う一方、以前から親交のあった朝倉義景が信長と敵対した場合、信長を相手に戦わなければならないという悩みもありました。

その長政の不安は現実のものとなり、やがて、信長と戦うことになります。

兄信長と夫長政との戦いを市はどのように思っていたのでしょうか。本作では、市の心境の描き方も読みどころです。

信長が朝倉義景を攻撃中、不意に浅井長政が裏切ります。それを信長に報せたのは市とされていますが、本作では、その場面は描かれていません。

本作に登場する市は、信長を嫌っています。その理由は、もう1人の兄である信行が信長によって殺害されたからです。優しかった信行を失った市は信長を恨み、彼の元を去りたいと思い続けていました。そのため、長政に嫁ぐことは、信長の道具となることではありましたが、市にとっては嬉しいことでした。

本作では、本能寺の変までは描かれていません。遠藤周作が描く織田信長のその後を知りたい方は、「決戦の時」より前に出版された「反逆」を読んでください。

 
 
決戦の時(下)-遠藤周作
取扱店