陰陽師 付喪神ノ巻
丑の刻参りを描いた「鉄輪」、男の浮気から恐ろしい事件に発展する「這う鬼」、鬼となった壬生忠見が夜な夜な現れる「ものや思ふと」、藤原兼通と兼家の権力争いと関係して安倍晴明が蘆屋道満と対決する「打臥の巫女」など7作品を収録。 |
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収録作品
瓜仙人
主な登場人物
あらすじ
大きな柿の樹の下で、馬で瓜を運ぶ下衆10人余りが休んでいます。源博雅が、彼らが瓜を食べている姿を眺めていると、どこからか1人の翁がやって来て、下衆に瓜をひとつくれるよう頼んでいました。
下衆が、その頼みを断ると、今度は足元に落ちている瓜の種をくれるよう頼みます。下衆がそれを許すと、翁は1粒の種を地面の穴に植え、源博雅からもらった水をその上にかけました。
すると、瓜が芽を出し、瞬く間に大きく育ち実も熟しました。そして、翁は、そのひとつを食べ始めるのでした。
読後の感想
突然現れた謎の翁。
物語は、おとぎ話のような展開になるのかと思いきや、『陰陽師』らしい怪異へと繋がっていきます。
とは言え、おそろしい妖物は出てくるものの、それは話のついでといった感じです。謎の翁は、安倍晴明に会いに都に現れたわけですが、その目的は、昔を懐かしむことにありました。
鉄輪
主な登場人物
あらすじ
夜更けの森の中、白装束の女が貴船神社に向かって歩いていきます。
女は、人形を握り、口には釘をくわえていました。そこに貴船の宮に仕える男が現れ、「今夜を最後に、汝が願い、聞き届けたり」と龍神が申したと女に伝えます。
そのような話を源博雅が安倍晴明に語っていました。毎夜、丑の刻参りをする女が貴船神社に現れることを迷惑に思っていた宮に仕える男が、嘘をついて女が来ないようにしていたのですが、それが思いもよらない方向に向かうのでした。
読後の感想
丑の刻参りを描いた短編です。
呪いの藁人形を釘で木に打ち付けると、呪っている相手が不幸になるというあの丑の刻参りです。
呪われた相手は藤原為良。安倍晴明と源博雅は、彼の命を助けるため屋敷に向かいましたが、予想外の展開へと続いていきます。
この作品を読むと、誰の心の中にも鬼が棲んでいるのだと思わせられますね。
這う鬼
主な登場人物
あらすじ
ある時、四条堀川のさる屋敷で長宿直(ながとのい)をしている紀ノ遠助が、鴨川の橋で女に声をかけられます。
女は、遠助が仕える貴子に届け物があると言い、箱を渡します。その際、遠助に中を見ないように言いました。遠助が自宅に帰って寝ると、彼の妻が、その箱を開け中を確かめます。すると、そこには気味の悪いものが入っていました。
遠助は、その箱を貴子に渡し、中を見た貴子は、安倍晴明を屋敷に呼ぶのでした。
読後の感想
浮気による男女のいさかいは、昔からあるもので、今も、有名人の不倫が話題になることがあります。本作は、その浮気から起こった恐ろしい事件が描かれています。
女を捨てた男。男に捨てられた女。男女のもつれが、世にも恐ろしい復讐劇に発展します。
迷神
主な登場人物
あらすじ
安倍晴明は、源博雅に三条大橋の東の智徳法師のもとに使いに行ってくれるよう頼みます。
使いの内容は、鼠牛法師(そぎゅうほうし)の住まいがどちらかを尋ねること。智徳法師は、博雅の問いに最初は答えなかったものの、博雅が晴明から預かった文を渡すと、青くなって西の京に住んでいると答えました。
鼠牛法師の住まいを知った晴明は、博雅とともに菅原伊通(すがわらのこれみち)の妻の藤子を救うため、西の京へ向かうのでした。
読後の感想
安倍晴明と蘆屋道満との対決を描いた短編です。蘆屋道満もまた、晴明とは別系統の陰陽師です。
死んだ菅原伊通が、藤子を訪ねて毎日やって来るのを晴明が成仏させる本作は、序盤の晴明と博雅の会話が伏線となっています。『陰陽師』では、晴明と博雅の会話から始まることが多いですが、これが物語の展開で重要になって来ることがしばしばあります。最初から気を抜かずに読み進めていきましょう。
ものや思ふと
主な登場人物
あらすじ
歌合で、平兼盛に負けた壬生忠見は、その悔しさから、食わずの病になって亡くなりました。
それから、夜な夜な内裏に鬼になった壬生忠見が現れるようになります。そのことを気にした帝は、源博雅を通じて安倍晴明に何とかするように命じます。しかし、害をなさない壬生忠見の怨霊を除くことは、安定を崩すことになると晴明は危惧します。
2人が、壬生忠見の怨霊の話をしていると、忠見の父の忠峯が晴明のもとにやって来たのでした。
読後の感想
平安時代や鎌倉時代に編纂された歌集には、詠み人知らずの歌が掲載されていることがあります。本作は、その詠み人知らずを題材とした作品です。
本作を読むと、詠み人知らずの歌は、本当に誰の作品かわからないものばかりなのかと考えさせられます。実は、故あって歌人の名を記せなかったのではないかと。
打臥の巫女
主な登場人物
あらすじ
10日ほど前、藤原兼家は、打臥(うちふし)の巫女のもとに行き占ってもらいました。すると、打臥の巫女は、瓜が見えると言いました。
瓜が良い徴か悪い徴かわからないまま兼家は帰宅し、やがて、そのことを忘れます。それから、2日前になって、兼家は、屋敷の前を通りかかった瓜売りから、瓜を2つ買ってくるよう家来の者に命じます。
さっそく、瓜を食べようとした兼家でしたが、打臥の巫女の言葉を思い出し、瓜を食べずに再び、巫女のもとを訪れるのでした。
読後の感想
藤原兼家には、兄に兼通がおり、2人は権力争いをしていました。本作は、その権力争いを描いた作品です。
兼家が買った瓜にいったい何があるのか。もちろん、その謎を解くのは、安倍晴明です。藤原氏の権力争いの裏で、陰陽師同士の戦いが繰り広げられます。
地吸い女房
主な登場人物
あらすじ
日照りが続いたある日。中納言藤原師尹は、女房を何人か連れ、神泉苑で雨乞いと称して宴を催しました。
それから、藤原師尹の屋敷では、夜になると女房たちの血を吸いに来るものが現れるようになります。女房たちは、首筋にあざができるも、死ぬことはありませんでした。しかし、そのような怪異が続くことは薄気味悪かったため、藤原師尹は、安倍晴明に頼ることにするのでした。
読後の感想
何者かが、夜な夜な女房たちの血を吸いにやって来るのを安倍晴明が解決する物語です。
神泉苑は、都で日照りが続いたとき、空海が雨乞いをした場所と伝えられています。その空海の雨乞いが本作の怪異へと繋がります。『陰陽師』では、伝承を基に作られた作品が見られるので、説話に興味がある人だとおもしくろく読み進められますね。
陰陽師 付喪神ノ巻-夢枕獏 |
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