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陰陽師 生成り姫

源博雅が12年前に出会った姫と再会します。姫は、近々行われる相撲の節会で、方術を使って海恒世が真髪成村に負けるよう、安倍晴明に頼んで欲しいと博雅に懇願します。それを聴いた晴明は、姫の願い通り海恒世を負けさせるのか。

主な登場人物

あらすじ

梅雨の夜。月光の中、安倍晴明と源博雅は、酒を飲んでいました。

酒が進むうちに博雅は、12年前に出会った女性のことを晴明に話し始めます。

夜に堀川にかかる橋のたもとで、月明の中、笛を吹いていると、女車が博雅の笛の音色を聴くように停まっていました。その晩は、声をかけずにいた博雅でしたが、毎晩、笛を吹くと女車が来るようになったことから、5日目の晩に意を決して声をかけることに。

博雅は、どこの姫かを訊ねましたが、忍びであるため名乗れないとの返事。

それからも、三月近く博雅の笛の音を聴きに女車はやって来ていました。そして、博雅の笛に合わせるように女車からは琵琶を弾く音が聴こえるようになります。その晩も、博雅は姫に名を訊ねましたが返事はなく、それ以来、博雅は姫の姿を見ることはなくなりました。

ところが、12年経ったある日、姫は博雅の前に姿を現します。姫は、近々行われる相撲(すまい)の節会(せちえ)で、海恒世が真髪成村に負けるよう、晴明に方術を使って欲しいと、博雅に頼むのでした。

読後の感想

陰陽師シリーズは、どれも短編を数話収録しているのですが、本書は、1つの作品だけを収録した長編となっています。

陰陽師の安倍晴明がどのような人物なのかの説明が序盤にあり、その後、晴明の友の源博雅を紹介し、物語へと続いていきます。

これまで陰陽師シリーズを読んだことがない方は、本作から最初に読んでも、その世界観を理解できるようになっています。

さて、本作「生成り姫」は、『陰陽師 付喪神ノ巻』に収録されている「鉄輪」を長編にした作品です。

「鉄輪」は、丑の刻参りをする女性が、やがて鬼になる物語ですが、長編となったことで、より読み応えが増しています。「鉄輪」を読んだことがある人は、「生成り姫」のどこから「鉄輪」につながっていくのか気になりながら読み進めることになるでしょう。

全く関係のなさそうな相撲の節会の場面が描かれていますが、ここも本作での重要なところなので、しっかりと記憶しながら読み進めてください。

晴明と博雅は、鬼になった女性を助けることができるのか。

陰陽師 生成り姫-夢枕獏
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