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陰陽師 太極ノ巻

平実盛がかかった奇病「猿叫」の謎を解決する「鬼小槌」、鬼に追われ怯える平重清を助ける「東国より上る人、鬼にあうこと」、道観に入って魂を奪われたようになった紀道孝と橘秀時の謎に迫る「覚」など6作品を収録。

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収録作品

  1. 二百六十二匹の黄金虫
  2. 鬼小槌
  3. 棗坊主
  4. 東国より上る人、鬼にあうこと
  5. 針魔童子

二百六十二匹の黄金虫

主な登場人物

あらすじ

安倍晴明は、自邸で源博雅と仁王経や涅槃経をたちまち諳んじたという恵増上人の噂話をしていました。

すると、屋敷に橘実之の娘の露子がやって来ました。そして、彼女は、広沢の寛朝僧正のところにとても不思議なぶんぶんがいると晴明に話し始めます。ぶんぶんは、非常に多く、その数は264匹116種類。

3人は、不思議なぶんぶんが何なのか突き止めに広沢に向かうのでした。

読後の感想

264匹のぶんぶん(黄金虫)の正体を安倍晴明が明らかにする短編です。始まりは、いつものように晴明と源博雅の雑談から。

露子が見た264匹のぶんぶんは何を意味するのか。116種類とともに数字に深い意味が隠されています。

鬼小槌

主な登場人物

あらすじ

一面雪の庭を眺めながら、安倍晴明と源博雅が酒を飲んでいます。そして、博雅は、平実盛が1ヶ月ほど前から行方不明になっていることを話し始めました。

平実盛は藤原清次に可愛がられていましたが、その清次も近ごろ都で流行る猿叫の病にかかって高熱にうなされていました。痛みのあまり、「おきゃあ」と寝床で声をあげることが病名の由来です。

晴明は、博雅が訪れる少し前に藤原清次の使者を迎えており、猿叫の病を診て欲しいと依頼されていたことから、博雅とともに藤原清次の屋敷に向かうのでした。

読後の感想

都で流行る奇病「猿叫の病」にかかった藤原清次と行方不明になった平実盛の事件を描いた短編です。

猿叫の病と平実盛の失踪。一見関係のなさそうな事象が蘆屋道満の登場でつながっていきます。

棗坊主

主な登場人物

あらすじ

安倍晴明は、自邸で源博雅に祥寿院という小さなお寺に奇妙な僧がやってきたことを話します。

僧の名は恵雲。半月ほど前に祥寿院を出て熊野に出かけた恵雲は、帰り道に吉野に立ち寄ることにしました。そして、吉野の近くまで来た山中で酒の匂いに気づきました。

足を停めた恵雲の耳にぱちりぱちりと碁を打つ音が聞こえてきます。すると、山桜の老樹の下で2人の老人が棗(なつめ)を食べながら碁を打っていました。

その後、祥寿院に戻ってきた恵雲でしたが、そこには自分が知っている僧はおらず、また、祥寿院にいる僧たちも彼のことを全く知りませんでした。

読後の感想

恵雲という僧が体験した奇妙な出来事を描いた短編です。

自分が暮らしていた祥寿院に戻ってきた恵雲は、そこに知っている者は誰もいませんでした。彼が熊野に出かけている間、祥寿院にいったい何が起こったのか。

結末を知った時、恵雲と棗の関係がわかると思います。そういうことだったのかと。

東国より上る人、鬼にあうこと

主な登場人物

あらすじ

安倍晴明が、自邸で源博雅と月を見ながら歓談していると、平重清という者が「お助けくださいまし」と言いながら慌てて飛び込んできました。

重清は、東国から都へ上って来て勢田の橋にさしかかったところで、日が暮れました。そのため、宿を探したのですが見つからず、誰も住んでいない荒れた屋敷で従者とともに泊まることにしました。

しかし、その屋敷で、重清は目に見えない鬼に追われることになり、食べられる寸前に晴明の屋敷に駆け込み命を助かったのでした。

読後の感想

恐ろしい鬼に追われ、食べられる寸前に安倍晴明の屋敷に飛び込んだ平重清の恐怖体験を描いた短編です。

読んでいると、自分が重清になったように「はやく逃げないと食べられてしまう」という恐怖感が湧き上がってきます。夏に読むと涼しくなること間違いなし。

主な登場人物

あらすじ

安倍晴明は、源博雅に自邸で紀道孝と橘秀時が気の病にかかったことを語ります。その病は、唐土の妖魅の類である覚(さとる)でした。

事の発端は、ある晩に源信好と藤原恒親が、六条に近い馬代小路にあった唐風の青瓦の屋根を持つ道観という屋敷に行ったことにありました。道観の前にやってきた源信好と藤原恒親は、共の者2人に命じて中に入らせます。しかし、どんなに待っても、共の者は出てきません。そこで、共の者からもう1人を中に入らせたのですが、この者も出てきませんでした。

そして、朝が来て明るくなったところで、残っている共の者を中に入らせてみたところ、夜に屋敷に入った共の者3人は無事でしたが、魂が抜けたように突っ立っていたのでした。

読後の感想

人は時に妄想から実際には存在しないものを見てしまうことがあります。本作は、そんな人の心理を題材にした短編です。

覚によって、腑抜けのようになった紀道孝と橘秀時、そして、源信好と藤原恒親の共の者3人。

安倍晴明が覚を退治する方法は意外なもので、その時、読者は覚の真の意味を考えることでしょう。

針魔童子

主な登場人物

あらすじ

安倍晴明は、播磨国の性空上人に仕える者から捜しものを頼まれました。

その頃、都では、何か虫のようなものに体を刺される事件が8件起こっていました。晴明は、源博雅にその事件を解決するカギを握っているのは、証空上人の出身地と吉備真備だと言い、ともに蘆屋道満のもとに行くのでした。

読後の感想

道を歩いていると、突然、虫のようなものに刺される怪事件を安倍晴明が解決する短編です。

事件解決のヒントとなるのはすでにこの世を去り長い年月が経っている吉備真備だという安倍晴明。読んでいて、なぜ、吉備真備と事件が関係あるのかさっぱりわからないのですが、読み進めていくと、その意味が理解できます。

陰陽師 太極ノ巻-夢枕獏
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