HOME > 作家別 > 早乙女貢 > 沖田総司(下)

 

沖田総司(下)

近藤勇らとともに結成した新選組で働く沖田総司は、不逞浪士を取り締まる日々を送ります。そんな中、大場典膳の妻たまきとの出会いが、総司の運命を変えていきます。八月十八日の政変、池田屋事件と活躍した新選組は、不逞浪士たちから恐れられる存在になっていきました。しかし、新選組の名が広まるにつれて、総司の病はひどくなるのでした。

主な登場人物

あらすじ

沖田総司は、先日、局長の新見錦らと訪れた祇園の店に代金を支払いに訪れました。

その帰り、浪人の大場典膳の妻たまきと出会ったところを平野国臣ら勤王の志士たちに目撃されます。病気の大場典膳は、勤王の志士たちと行動を共にしていました。たまきは、総司と話をしているところを見られ、新選組に通じていると疑われてしまいます。

勤王の志士たちは、倒幕のため孝明天皇の大和行幸を画策します。そして、先兵として天誅組が五条代官所を襲撃しました。しかし、孝明天皇に倒幕の意思はなく、勤王の志士たちを動かしている長州藩を京都御所から追放することを決断します。

新選組は、会津藩とともに御所を守り、長州藩の追い落としに成功しました。しかし、この頃になると、芹沢鴨や新見錦の悪行が新選組の名を汚し始めており、近藤勇や土方歳三は、彼らを処分することにしました。

新選組は、勤王の志士たちの探索を続けます。そして、升屋喜右衛門を捕らえ、長州系の浪士たちが、京都を火の海にし、京都守護職の松平容保を血祭りにあげる計画をしていることを白状させました。

総司は、この計画を未然に防ぐため、近藤勇らとともに浪士たちが集まっている池田屋に向かうのでした。

読後の感想

沖田総司の最終巻です。

上洛して新選組を結成した総司たちは、不逞浪士の取り締まりを強化します。

その頃の京都は、勤王と叫ぶ浪士たちによる暗殺が横行していました。新選組は、彼らを捕縛していき、やがて、浪士たちが京都を火の海にするという計画を知り、池田屋事件が起こります。

本作では、総司がたまきと出会ったところから、池田屋事件へとつながっていきます。池田屋事件は、新選組の名を一躍有名にした事件であり、沖田総司の生涯において、最も活躍した舞台でした。しかし、池田屋事件で喀血してからの総司は病気がちとなり、新選組の勢いも次第に衰えていきます。

幕末を扱った小説では、政治的な話が多く、内容を理解するのが難しい面があります。でも、本作は、沖田総司という青年の日々の勤めと恋を描いた作品となっており、政治的な複雑さはそれほど感じません。

沖田総司は、幕末動乱の中、新選組という特殊な組織に所属したこと以外は、ごく普通の青年だったように思えます。本作では、その普通の青年を中心に物語が進んでいくので、19世紀の歴史の世界のように感じられない面があります。現代に沖田総司が生きていれば、どこにでもいる好青年だったのでしょう。しかし、幕末動乱期に生まれたことから、彼を一種特殊な剣の達人と思わせる面があるのかもしれません。

沖田総司(下)-早乙女貢
取扱店(広告)