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峠の群像(3)

幕府は、徳川綱吉の生母桂昌院の昇位のため、江戸城に勅使を迎えることを決定します。柳沢保明は、勅使饗応役の経験がある浅野内匠頭を今回も同役に任じます。しかし、二度も勅使饗応役を任されることになった浅野内匠頭は、吉良上野介の嫌がらせだと誤解するのでした。

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主な登場人物

あらすじ

素良は、竹島喜助の急死で、三代目竹島喜助となりました。

その頃、江戸では、火災で自邸を失った吉良上野介が子の上杉綱憲に用意してもらった屋敷に移っていました。それに対して、浅野内匠頭は、狩野探幽の軸を祝いとして贈りましたが、小判ではなかったことに吉良上野介は落胆するのでした。

一方、赤穂では、全国に広がった不況の影響を受け、塩業に不安が出てきました。石野七郎次は打開策を思いつき、これに対して、浅野内匠頭は妻の阿久里の資産を塩業のために使うことにします。

幕府では、徳川綱吉の生母桂昌院の昇位を朝廷に働きかけていました。吉良上野介は、朝廷に顔が利くことを理由に柳沢保明に上洛の許しを請い、柳沢はこれを認めます。また、江戸城に勅使を迎えるにあたり、柳沢保明は、過去に勅使饗応役を勤めた経験を持つ浅野内匠頭を再び同役に任じました。

浅野内匠頭は、勅使を迎えるにあたり吉良上野介の指導を仰ごうとしますが、吉良が上洛中だったため、どのように準備をして良いか困り果て、やがて、二度も勅使饗応役を任じられたのは吉良の嫌がらせに違いないと苛立ち始めるのでした。

読後の感想

第3巻では、いよいよ浅野内匠頭が松の廊下で吉良上野介に斬りつける事件が起こります。

もともと吉良上野介を快く思っていなかった浅野内匠頭は、赤穂の塩が吉良の領国に出回り始めたことに嫌味を言われたことで、さらに吉良への嫌悪感を強めていきます。

松の廊下での刃傷事件は、桂昌院昇位にあたり勅使を迎えること、そのための吉良上野介の上洛、そして、生類憐みの令が重なったことで起こった不運な出来事でした。

勅使を迎えるにあたり、食事は、慣例にならい従来通りのものを用意すべきか、それとも、生類憐みの令に抵触しないように精進料理を用意すべきか、浅野家の家臣は悩みます。通常なら、吉良上野介に相談すべきところですが、あいにく、吉良は上洛中で相談できません。

これが、ますます浅野内匠頭を吉良嫌いにさせていきます。

松の廊下での刃傷事件の後、赤穂に残っている大石内蔵助と大野九郎兵衛は、藩札の整理に悩まされます。過去に水谷家と森家の断絶を見てきたことが、ここで活かされようとは、大石内蔵助も思っていなかったでしょう。

現代のように法によって債務整理が行われていなかった時代ですから、債権者への対応をまちがえると武士と言えども身の安全は保障されません。大石内蔵助と大野九郎兵衛が、この危機をどう乗り切るのか、また、三代目竹島喜助となった素良は、浅野家への多額の貸し付けをどのようにして回収するのか、この辺りも第3巻では注目です。

峠の群像(3)-堺屋太一
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