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峠の群像(2)

幕府財政の建て直しのため、荻原重秀が柳沢保明に貨幣改鋳を献策します。貨幣改鋳は、物価高を招き、赤穂藩も新浜造営の費用捻出に苦慮します。赤穂藩の浜子たちも物価高で生活が苦しくなるものの、財政悪化のため、彼らの賃銀引き上げをできないのでした。

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主な登場人物

あらすじ

経済が発展し、文化が花開いた元禄の世でしたが、幕府の財政は逼迫しつつありました。

支出の増加、財政収入の逓減、そして、貨幣経済の浸透による物価の高騰が武士を窮乏させていったのです。そこで、徳川綱吉は第一の急務を財政再建とし倹約を奨励しますが、うまくいきませんでした。

このような状況で、荻原重秀が貨幣改鋳を柳沢保明に献策します。財政問題が良くならない以上、幕府は、荻原重秀のいう貨幣改鋳をするより仕方がありませんでした。

金銀の含有量を減らし、通過量を増やす貨幣改鋳の噂は江戸の商人の間に流れ、大坂の塩問屋竹島喜助の耳にも入りました。そして、金銀の含有量が減る前に急いで掛け売り代金を回収し、小判を蓄え始めます。

一方、赤穂藩でも物価高が財政に悪影響を及ぼしていました。塩の生産量を上げるための新浜造営の費用が高騰し資金繰りが悪化。それに対応するため、石野七郎次は、手持ちの塩を早めに売却して現銀化し、それを両替屋鴻池善右衛門に預け金利を稼ぎ、借金の金利負担を軽減しました。

しかし、物価高騰は、浜子たちの生活にも影響を与えており、賃銀引き上げを望む浜子たちの願いを赤穂藩は叶えることができないのでした。

読後の感想

第2巻では、幕府の貨幣改鋳の影響が赤穂藩を襲います。

幕府が財政建て直しのために小判や銀貨の金銀の含有量を減らし、通過量を増やした政策は物価高騰を招きました。赤穂藩は、塩の増産のため新浜を造営することにしましたが、その資材が高騰し、当初の予算では賄いきれなくなります。それでも、石野七郎次が、竹島喜助とその娘の素良に相談し、なんとか急場をしのぎます。

本作は、元禄の時代を経済の視点で描いており、幕府や赤穂藩の財政政策がどのようなものであったのか理解しやすくなっています。幕府の貨幣改鋳は、現代の視点では正しい経済政策と言えますが、当時の人々には不安なものだったでしょう。

第2巻では、赤穂藩の良質な塩が流通し、それが経済摩擦となり、吉良上野介の不評を買うことも描かれています。赤穂の塩は、吉良の領国三州饗庭村にも出回るようになり、当地の塩業者に悪い影響をもたらしていました。

戦乱が終わり泰平の世となったものの、江戸時代は、経済摩擦が新たな問題となっていたんですね。

峠の群像(2)-堺屋太一
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