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峠の群像(1)

財政難にあえぐ赤穂藩。年々、借金は膨らみ、その利払いも大きくなる中、大野九郎兵衛に仕える石野七郎次が、赤穂の特産品である塩に活路を見出します。ところが、水谷家の取り潰しによる松山城の接収を命じられた赤穂藩は、大きな出費を余儀なくされるのでした。

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主な登場人物

あらすじ

元禄6年(1693年)旧暦6月。浅野内匠頭は、江戸城本丸御殿の柳之間で、陸中一ノ関城主田村右京太夫と国元に帰ることについて雑談をしていました。すると、そこに吉良上野介が現れ、田村右京太夫には当時権勢を誇っていた柳沢保明(吉明)のもとに案内しようとしましたが、浅野内匠頭には軽い会釈をするだけでした。

以前から、吉良上野介の態度には、腹を据えかねていた浅野内匠頭。この時も額に青い血管を浮き上がらせていました。

江戸を発った浅野家の行列が、国元の赤穂に近づく頃、藩の財政を取り仕切っていた大野九郎兵衛は、今回の旅費のうち銀十貫ほどを残せるかもしれないと安堵していました。しかし、赤穂藩の財政は厳しく、このままでは借金の利払いだけで藩が倒れてしまうほどの状況。筆頭家老の大石内蔵助らとともに藩財政をどうするか話し合うものの結論は出ませんでした。

渋い顔で帰宅した大野九郎兵衛。彼に仕える石野七郎次は、藩財政の立て直しに塩に等級を付けて値段に差を付け、塩を入れる俵も規格を統一することを提案します。さらに塩田の開発も進め、塩の生産量を増やすことも進言しました。

この石野七郎次の献策により、赤穂藩の財政立て直しが順調に行くかに思えたのですが、水谷家の取り潰しにより、幕府からその居城の松山城を接収するように命じられ、重い出費を余儀なくされるのでした。

読後の感想

江戸時代の赤穂藩を描いた作品です。赤穂藩と言えば、忠臣蔵ですが、本作は、経済を中心に物語が展開していくのが他の忠臣蔵の作品とは違っています。

この頃は、参勤交代で、各藩は江戸と国元を往復するための旅費を捻出するのに苦労していました。赤穂藩も、財政難で、毎年借金が膨らみ、利払いも増えていく一方でした。赤穂の特産品である塩を売ることで財政を支えようとするも、うまくいかない状況が長く続き、家老の大野九郎兵衛は困り果てていました。

そんな時、石野七郎次が、塩に等級を設けることや塩を入れる俵を統一すること、塩田開発に力を入れることなどを献策します。

本作では、大坂の商人の竹島喜助と娘の素良が登場し、当時の塩の取引や金融がどのようなものであったのかが、物語の合間で説明されています。これにより、江戸時代の大まかな経済事情が理解できるようになっています。

一方、江戸城では、幕府との良好な関係を保つため、柳沢保明との縁を深めておく必要がありました。柳沢保明との間を取り持つのは吉良上野介。柳沢保明に取り入るには吉良上野介への賄賂が必要で、その資金を工面するのも一苦労です。そんな状況で、降ってわいた松山城の接収が、赤穂藩の財政悪化に追い打ちをかけます。

物語は、中山安兵衛(堀部安兵衛)の高田馬場の決闘から始まります。

峠の群像(1)-堺屋太一
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