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豊臣秀吉(8)

小牧長久手の戦いの後、関白太政大臣となった豊臣秀吉は、その権威を武器に一気に天下統一を進めていきます。秀吉の野望は国内の統一にとどまらず、やがて明国も領土にしようと考え始めます。しかし、年老いた秀吉に刻一刻と死が迫っていました。

主な登場人物

あらすじ

小牧長久手の戦いの後、秀吉は徳川家康との和睦を図るため妹の朝日姫を家康に嫁がすことを決めます。

戦国時代は、いよいよ秀吉の天下統一によって幕を閉じようとしていました。そして、秀吉は天下を治めるために関白太政大臣となり姓を羽柴から豊臣に改めました。ここに豊臣秀吉が誕生したのです。

関白の響きは強力で、その役職を口にするだけで諸国大名はひれ伏し、九州征伐も短期間に終わりました。しかし、関白の魔力に魅せられた秀吉は、この頃から少しずつ傲慢になっていきます。

秀吉に諫言できるのは弟の秀長でしたが間もなく病死。その直後、口うるさい千利休も秀吉によって切腹に追い込まれます。

いさめる者がいなくなった秀吉は、ついに明国への出征を決断。諸国大名を朝鮮半島へと派遣しました。しかし、戦況は秀吉の予想を大きく裏切り、日本兵は朝鮮半島で窮地に立たされます。

子の鶴松の早世と秀頼の誕生。甥の秀次一族の処刑。次第に民意は秀吉から離れていきます。

秀吉は明国との戦いを終わらせる決断をします。明国の使者を大坂城と伏見城に招き、その大きさに驚嘆させて和睦に持ち込むつもりでしたが、予期せぬ大地震により伏見城は倒壊。

しかし、この大地震が再び秀吉の野望に火を着けるのでした。

読後の感想

豊臣秀吉の最終巻です。

秀吉の生涯は波乱に満ちたものでした。そして、その波乱の大部分は後半生に訪れます。国内の統一までは、秀吉の思うとおりに事が運びました。しかし、その後の秀吉は何をやるにも自分の思い描いたようにならなくなります。

後継ぎ問題、明国との戦い。どれも誤算だらけ。

この作品に登場する豊臣秀吉は、木下藤吉郎時代と羽柴秀吉時代はとても魅力的な人物に映ります。織田信長に仕えて出世のために邁進する日々。信長亡き後の天下統一まで。この世から戦乱をなくそうと働き続ける秀吉を誰もが好ましく思うことでしょう。

しかし、天下統一後の傲慢な秀吉には全く魅力を感じません。一人の人間の性格がこうも変わってしまうものかと恐ろしくなってきます。

山岡荘八の豊臣秀吉の興味深いところは、秀吉が自らの力で天下を統一したのではなく、秀吉に天下を取らせようと多くの人の力が水面下で働いていたという構成です。曽呂利新左衛門や千利休が、その代表です。自分の意思で動き、自分の力で事を成し遂げていると思ったら、実は裏で糸を引く人物がいる、人の世とはそういうものなのでしょうね。

豊臣秀吉(8)-山岡荘八
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