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徳川家康(6)

武田との戦に備えるため、家康は奥平との関係を強めようと、亀姫を嫁がせます。また、奥平貞能は、武田を油断させるため、千丸とおふうを人質に出します。一方、織田信長は、小谷城を囲み浅井長政を追い詰めていました。信長は、羽柴秀吉に命じ、市とその娘3人を救出させるのでした。

主な登場人物

あらすじ

家康と不仲になっていった築山御前は、側室のお万の方を暗殺しようと計画しますが失敗します。

その頃、家康は、武田との戦に備えるため、奥平に縁を深めるための使者を送ります。そして、徳川から亀姫が奥平に嫁ぐことになりました。また、奥平は、徳川と内通していることを悟られないため、奥平貞能の子の千丸と家臣夏目五郎左衛門の娘のおふうを武田に人質として差し出しました。

奥平を味方につけた家康は、長篠城を攻略します。武田と内通していた大賀弥四郎と築山御前は、謀反の機会を逃すのでした。

一方、織田信長は、浅井長政父子がたてこもる小谷城を取り囲んでいました。小谷落城が近づく中、信長は、妹の市とその娘3人を救出するよう羽柴秀吉に命じ、秀吉はそれに応え、市と娘3人を城から出すことに成功しました。

奥平の裏切りを知った武田勝頼は、人質の処刑を実行します。武田の勢いが弱まる中、大賀弥四郎と築山御前の企みも次第に家中に知れ渡り、やがて家康の知るところとなるのでした。

読後の感想

第6巻では、徳川と武田との睨み合いが始まります。信玄亡き後、自らの力を家中に示したい武田勝頼は、徳川に対して無理な戦を仕掛けます。一方の家康は、できるだけ戦を避けて国力を高めていこうとします。

家康は、武田との戦に備えるため、奥平と縁を深めます。徳川からは、亀姫が奥平に嫁ぐことになりましたが、奥平は武田を油断させるため、千丸とおふうを人質に差し出すことになります。最初から、武田を騙すために差し出した人質だったので、奥平貞能は、千丸とおふうの命は助からないことをわかっていました。千丸とおふうが背負った戦国の悲しき宿命。涙なしには読み進むことはできません。

織田と浅井との戦もまた、戦国の女性のどうすることもできない運命を描いています。浅井長政に嫁いだ市は、夫の死と引き換えに3人の娘の命を救うことになりますが、それは市にとって最良の選択だったのか考えさせられます。

大賀弥四郎の妻のお粂も、戦国の宿命を背負った女性の一人でした。身分の低い足軽時代から夫を支えてきたお粂は、大賀弥四郎が出世した後も、毎日の家事を怠ることなくこなしていました。とんとん拍子に出世する夫が周囲からねたまれることをわかっていたお粂は、贅沢をせずに6人の子供たちを育てていました。

そのお粂の気持ちに気づかない大賀弥四郎が、築山御前とともに謀反を企てたため、お粂も処刑されてしまいます。

第6巻では、全体を通して、自分の意思ではどうすることもできない戦国の女性の運命が描かれています。家康の側室のお万の方、信康に嫁いだ亀姫と彼女に仕える小侍従。先に記した3人の女性以外にも、いたるところで、女性の悲しみを見ることになります。

徳川家康(6)-山岡荘八
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