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鎮西八郎為朝(上)

藤原頼長の家臣と揉め事を起こした源為朝は、九州に送られることになります。武将たちが睨み合う九州は、合戦が絶えず庶民たちは苦しい生活を強いられていました。それを見かねた為朝は、自らが九州を平定し平和な世とするために起ち上がるのでした。
 
 

主な登場人物

あらすじ

弦月(ゆみはり)の冠者と呼ばれていた駒若は、身寄りのない者たちを集め黒羽の党を結成し人さらいたちを懲らしめていました。この時出会った三町礫(さんじょうつぶて)の紀平治と妹のもえぎから、元服し八郎為朝となった駒若は、母の居場所を教えられます。

母千寿に会った為朝は、その時、藤原長頼の家臣と喧嘩し、九州に旅に出されることになりました。為朝は、父為義から大宰府の大弐藤原実正への添状を渡され、隙間数(すきまかぞえ)の悪七別当と須藤九郎重季の家臣とともに、烏帽子親の信西からもらった犬の山雄を連れ、船で九州へと向かいます。

船旅の途中、海賊大将の村上左衛門尉とその子義連と出会います。村上左衛門尉は、為朝が命を狙われていることを知り、九州まで護衛し、別れ際に鷹の海雄を為朝に贈りました。

大宰府に到着した為朝は、藤原実正の子の実行と争いになり、阿曽忠国のもとへ向かうことになります。

その頃、九州では、武将たちが互いに睨み合い、合戦を繰り返していました。為朝は、罪とがのない庶民を救うため、九州の平定を志します。そして、阿曽忠国の領地を狙う菊池経隆を降して味方とし、衛藤家との戦いにも勝利します。さらに悪政を行っていた大宰府の大弐藤原実正を懲らしめ、為朝はその宿願を果たし、鎮西八郎為朝と名乗りました。

しかし、京都では、後白河天皇と崇徳上皇の権力争いが激しくなっており、為朝は京都に呼び戻されたのでした。

読後の感想

平安時代末期の弓の名手として知られる源為朝を主人公にした作品です。

本作は、桃太郎のようなおとぎ話を読んでいる気分になる時代小説です。高校生くらいの年齢の為朝が、犬の山雄と鷹の海雄を従え、傀儡子の三町礫の紀平治、忍びの術に長けた霞の五郎、大力の手取の与三次(よそうじ)などとともに九州を平定します。

三町礫の紀平治は、石を三町(約300メートル)先まで投げることができ、合戦の際も活躍します。犬の山雄は陸から、鷹の海雄は空から、偵察や捜索をし、主人の為朝のために尽くします。

もはや歴史小説というよりファンタジーの世界です。ページ数が多いですが、今昔物語の説話の一部が混ざっていたりするので、読んでいて飽きにくく、子供から大人まで楽しむことができます。

上巻では、為朝が九州を平定した後、京都に呼び戻され保元の乱に巻き込まれるところまでが描かれています。保元の乱は、後白河天皇と崇徳上皇が争いましたが、それぞれに源氏と平氏の武将が分かれ骨肉の戦いとなります。特に源氏は、為朝の父の為義と兄の義朝が敵味方となり、父子が戦うことになりました。為朝は、為義と他の兄弟とともに崇徳上皇側につきましたが、合戦は後白河天皇の勝利に終わります。

源平合戦を描いた歴史小説では、為朝は、保元の乱にしか登場しないことが多く完全な脇役です。だから、源為朝という武将については、弓の名手くらいの認識しかなく、彼がどのようにして九州を平定したかをご存じない方が多いです。

乱後、為義と兄弟たちが次々と捕らえられる中、為朝は戦場から逃れることができましたが、やがて追手が為朝の潜伏場所を探知し捕縛されることになります。

その後、為朝や彼に従う者たちはどうなったのか。続きは下巻で。

 
 
鎮西八郎為朝(上)-村上元三
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