天璋院篤姫(下)
夫と養父を立て続けに亡くした篤姫。14代将軍家茂に嫁いだ皇妹和宮との仲はうまくいかず、事あるごとにいがみ合います。徳川宗家を思う篤姫と天皇の攘夷の意思を実現すべく降嫁した和宮。二人の気持ちがすれ違いながら、幕府は瓦解へと向かうのでした。 |
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主な登場人物
あらすじ
夫の徳川家定と養父の島津斉彬を立て続けに失った篤姫。
将軍職は、紀州の徳川慶福(家茂)が継ぐことになり、一橋慶喜を将軍に据えようとする薩摩藩の思惑は潰え、篤姫の側に仕えていた幾島も大奥を去りました。
幾島が去った後、家茂の縁談話が持ち上がります。この頃、幕府の政治上の立場は弱くなっていました。なんとか以前の力を取り戻そうと、幕府は朝廷と協力する公武合体を進めるため、孝明天皇の妹の和宮(静閑院宮)を家茂の御台所として迎えることを計画します。
江戸に降嫁した和宮でしたが、大奥のしきたりには従わず、京都での習慣を保ち続けます。そのため、大奥では、江戸方と京方で事あるごとに争い、篤姫は苦り切っていました。
和宮降嫁の後も、幕府の権勢は衰えていきます。幕府は、禁門の変で長州藩を京都から退けたものの、再び力を盛り返した長州藩を討伐しなければなりませんでした。
そして、将軍家茂みずから長州征伐を指揮するために大坂城へ向かうのでした。
読後の感想
天璋院篤姫の下巻です。
夫家定亡き後、紀州の家茂が将軍となり、篤姫は将軍の母となります。幕威を盛り返すため、家茂と皇女和宮の婚姻が決まり、篤姫は姑となり大奥を取り仕切るのですが、和宮との仲はうまくいきません。
下巻では、篤姫と和宮の嫁姑関係が中心に描かれています。二人の仲を悪くさせたのは、側に仕える者たちのいがみ合いが大きく、幕府が倒れるまで、二人はお互いの気持ちをわかり合うことができませんでした。
本作に登場する篤姫は、とても賢い女性として描かれています。島津斉彬がなぜ自分を徳川家定に嫁がせたのか、篤姫は、一橋慶喜と初めて会った後にその意図に気づきます。
14代将軍家茂は、大坂へ向かう前、次期将軍を紀州の亀之助(家達)にするように告げていましたが、亀之助は幼少であったことから一橋慶喜が15代将軍となりました。もしも、15代将軍が家達であったら幕府のその後はどうなっていたでしょうか。慶喜は、ナンバー2の地位にある時に能力を発揮できた人物ではないでしょうか。家達を支える立場であれば、鳥羽伏見の敗戦後に江戸に逃げ帰ることはなかったかもしれません。
幕府瓦解後、篤姫は家達の養育に力を注ぎます。また、明治になってから、篤姫と和宮の仲は良くなります。大奥時代よりも幕府瓦解後の方が、篤姫は幸せだったと思います。
明治以降の篤姫の生き方は、敗者の悲壮感を感じさせません。むしろ、明治になってからの方が、篤姫は自らの能力を大いに発揮できたように思えます。
天璋院篤姫(下)-宮尾登美子 |
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