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額田女王

中大兄皇子が蘇我入鹿を斬って新政府を樹立した頃。額田女王は、大海人皇子の誘いを受け十市皇女を宿します。しかし、中大兄皇子が大海人皇子に額田女王を所望したことから、彼女は中大兄皇子の妃になるのでした。

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主な登場人物

あらすじ

中大兄皇子と中臣鎌足が謀って蘇我入鹿を斬った皇極4年(645年)の政変から5年。旧勢力は、新政府内から姿を消していました。

その頃、額田女王は、中大兄皇子の弟の大海人皇子の誘いを何度も受けていましたが断り続けていました。しかし、大海人皇子の観梅の宴への誘いは断り切れず承諾することに。そして、彼女は大海人皇子の子を宿します。しかし、額田女王は、神のお告げにより神の子を宿したというのでした。

額田女王が、お腹に子を宿している頃、巷では遣唐使派遣の噂が流れ始めていました。その噂は事実で、やがて遣唐船が発遣されたものの失敗に終わります。それでも、中大兄皇子は中臣鎌足のすすめにより再び遣唐使の派遣を決定しました。

孝徳天皇が崩御すると、皇太子の中大兄皇子が即位するものと思われていましたが、斉明天皇が重祚することになりました。そして、中大兄皇子は、ライバルとなりかねない有間皇子を亡きものにし、政権の安泰を図ります。さらに中大兄皇子は、大海人皇子に額田女王を譲るように迫り、彼女は中大兄皇子の妃になるのでした。

読後の感想

額田女王の生涯を描いた作品です。生涯といっても、壬申の乱後の彼女についての文献はほとんど残っていないため、それ以降については描かれていません。

額田女王は歌人としての印象が強く、以下の歌を詠んだことは特に有名です。

茜さす紫野行きしめ野行き野守は見ずや君が袖振る

本作でも、上の歌を詠む場面が描かれており、読みどころの一つとなっています。

さて、額田女王は、大海人皇子との間に十市皇女を授かります。しかし、彼女は、十市皇女を大海人皇子の子とは言わず、神の子だと言いました。神の声を聞く女であることを強く意識していた額田女王は、自分が宿した子を大海人皇子の子だと、あえて言いませんでした。

やがて、額田女王は、中大兄皇子の妃となります。大海人皇子との三角関係をどう捉えるかは読者次第です。

物語自体は、中大兄皇子を中心とした政治を背景に進んでいきます。朝鮮半島に出兵し、白村江の戦いで新羅に敗れたことで、国内はいつ新羅から攻撃されるかわからない悲壮感が漂っていました。そのような不安な情勢の中、天智天皇(中大兄皇子)が崩御し、壬申の乱が起こります。

大海人皇子と十市皇女を妃とした大友皇子が戦った壬申の乱は、大海人皇子の勝利で幕を閉じます。娘の父と娘の夫が戦った壬申の乱を額田女王は、どのように感じていたのでしょうか。

額田女王-井上靖
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