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陰陽師 龍笛ノ巻

2人の男女にできた謎の腫れ物を治した謎の老人が登場する「怪蛇」、三角関係のもつれから恐怖体験をすることに男を描いた「首」、娘がかわいがる毛虫が子牛ほどの大きさまで育った「むしめづる姫」など5作品を収録。

収録作品

  1. 怪蛇
  2. むしめづる姫
  3. 呼ぶ声の
  4. 飛仙

怪蛇

主な登場人物

あらすじ

藤原鴨忠の屋敷に仕えている小菊という女の右足の太股にできものができました。小菊や藤原鴨忠が太股の痛みをどうすることもできないでいると、ある老人が現れ、それを何とかしてしんぜようと言います。

そして、小菊の太股のできものは、その老人のおかげで治癒しました。

また、橘好古も、背中に握り拳ほどの大きさの膨らみができていました。好古もまた痛みで苦しんでいると、老人が訪れ、それを治していきました。

小菊と好古のできものは何だったのか。また、老人の正体はいったい誰なのか。

読後の感想

2人の男女のできもの。そして、それを治した老人。

陰陽師シリーズを読んでいる人は、途中で老人の正体はわかるかと思います。でも、できものが一体何なのかは、最後まで読まなければわかりません。

2人の男女にできた謎の膨らみは、ある人物のちょっとした不注意が原因なのですが、そんな展開になるとは、なかなか気づけませんね。

主な登場人物

あらすじ

藤原為成と橘景清は、藤原長実の娘の青音(あおね)の恋敵同士。

2人は、ある晩、青音に一条の六角堂に呼び出されます。青音は、鴨川の首塚に置かれた石を1人が取って来て、その後、もう1人が首塚に石を戻しに行く趣向を提案。そして、青音は、それができた方のものになると言いました。

くじの結果、景清が先に首塚の石を取りに行くことになりましたが、一向に戻ってくる気配がありません。そこで、景清の様子を見に行った為成でしたが、恐ろしい出来事に遭遇するのでした。

読後の感想

飢えに苦しみながら死んだ者の霊の恐ろしさが伝わってくる短編です。

藤原為成に恐怖体験を打ち明けられた賀茂保憲は、途中まで、為成の手助けをしましたが、その後、安倍晴明に代わりを頼みます。

いつものように源博雅と酒を酌み交わしていた晴明は、気乗りはしなかったものの、為成を助けるため彼の邸宅に向かいます。

むしめづる姫

主な登場人物

あらすじ

橘実之の娘露子は、色々なむしを飼っていました。

露子が特に興味を示したのは、烏毛虫(かわむし)、すなわち毛虫でした。露子は、最初は、烏毛虫を死なせたものの、烏毛虫ごとに好む植物がわかるようになってからは、滅多に死なせることはありませんでした。

ある日、童子が露子の前に真っ黒な毛のない烏毛虫を持ってきました。その珍しい烏毛虫に黒丸と名付けた露子は、毎日、桜の葉をエサとして与えます。すると、黒丸は、日に日に大きくなり、やがて、子牛ほどにまで成長したのでした。

読後の感想

不思議な毛虫の話です。

大きく育ってくる毛虫を想像すると鳥肌が立つかもしれません。また、毛虫はどのような蝶になるのか期待しながら読む人もいるでしょう。

巨大化した黒丸は、いったいどうなるのか。そして、安倍晴明は、どのような活躍をするのか。物語の中盤まで読んでも、その先の展開がわかりません。

呼ぶ声の

主な登場人物

あらすじ

藤原伊成は、月の夜に満開の桜の下で琵琶を弾いていました。

すると、いずこからか、「いや、実にみごとな琵琶であったなあ―」と言う声が聴こえてきました。その声は、伊成に話しかけ、「ゆきまするが、よろしいか」と訊ねてきたので、伊成は「お、おう」と返事をしました。

それから、伊成は、再び桜の木の下に行き、一晩中琵琶を弾き続けた後、深い眠りに入り、家人が起こそうとしても起きなくなりました。ところが、どこからともなく声が聞こえてくると、伊成は目を覚まし、誰かに話しかけながら琵琶を弾き始めるのでした。

読後の感想

人は同じ場所に押し込められることに苦痛を感じるものなのだと考えさせられる短編です。

伊成は、毎晩、どこからともなく聞こえてくる声と話しながら琵琶を弾きます。そして、弾き終わると誰が起こそうとしても起きなくなり、次第に体が痩せ細っていきました。そこで、伊成の家人が源博雅に相談し、安倍晴明のもとに博雅がやって来てという、いつもの展開につながっていきます。いったい、声の主は誰なのか。

飛仙

主な登場人物

あらすじ

藤原友則が、娘の頼子が疝気の病になったことを藤原兼家に話したところ、兼家は、良い薬があると言って友則に与えました。

友則は、頼子にその薬を与えたところ疝気は治ったものの、今度は気ふれになり高い場所を好むようになってしまいます。

そして、頼子は、屋根から飛び降り頭から落ちて意識を失いました。その話を兼家に話した友則でしたが、兼家は自分には何もできないと言って、薬師か陰陽師に話を持っていくよう言います。

帰宅した友則。すると屋根の軒下からぶら下がる妖のものと遭遇するのでした。

読後の感想

いつの時代も、不老不死は人の願いです。そして、空を飛ぶこともまた人が描く夢の一つです。本作は、その空を飛びたい欲求を叶えようとした仙人の話です。

修行をして空を飛べるようになるには時間がかかります。そこで、空を飛べるようになる薬を飲むという選択を選んだ仙人は、天足丸(てんそくがん)を作りました。しかし、その天足丸を落としたことで、思わぬ事態が発生します。

陰陽師 龍笛ノ巻-夢枕獏
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