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隼別王子の叛乱

弟たちを死に追いやり大王となった大鷦鷯のやり方に不満を持つ隼別の王子。その不満は、大鷦鷯の大王が彼の恋人女鳥の姫をさらったことで叛乱という形で表に現れます。叛乱の最中、隼別の王子と合流した女鳥の姫。古墳時代の悲しき恋物語が始まります。

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主な登場人物

あらすじ

大鷦鷯(仁徳天皇)は、自分にとって邪魔だった弟たちを死に追いやり大王となりました。

大鷦鷯の弟である隼別の王子は、大王のやり方に不満を持ち、祝宴の席で非難し始めます。しかし、大鷦鷯の大王は、それを軽くいなし大事にはしませんでした。

ある日、大鷦鷯の大王は、隼別の王子を紀の国に遣わします。そして、隼別の王子がいぬ間に彼の恋人の女鳥の姫をさらいました。これを知った隼別の王子は、女鳥の姫を奪還するため、大鷦鷯の大王に対して叛乱を起こす決意をします。

隼別の王子のもとに向かいたい女鳥の姫。それを知る磐之媛の大后は、密かに女鳥の姫を逃がしました。しかし、それはすぐに大鷦鷯の大王の知るところとなります。大王は、怒りを露わにし、隼別の王子の叛乱を鎮めるため、大軍を差し向けるのでした。

読後の感想

隼別の王子と女鳥の姫の恋物語です。

本作は、第一章「隼別王子の叛乱」と第二章「冥界を翔ぶ白鳥(くぐい)」で構成されています。

タイトル通り、大鷦鷯の大王の弟である隼別の王子は叛乱を起こします。その叛乱の最中、女鳥の姫は、大鷦鷯の大王のもとから脱出し、隼別の王子の軍に合流します。

情報が少ない古代を題材とした作品では、単に事件の経過を説明するだけになりそうですが、本作では、登場人物の心情が生き生きと描かれています。「隼別王子の語れる」や「磐之媛の大后の語れる」といった具合に目線が切り替わり、各登場人物の視点で物語が進んでいくのがその理由でしょう。

女鳥の姫を我が物にしようとする大鷦鷯の大王。それを知る磐之媛の大后は、女鳥の姫をなぜ逃がしたのか。大王と大后との関係からも目が離せません。

第二章「冥界を翔ぶ白鳥」は、隼別の王子の叛乱後の世界が描かれています。第二章を読んでいると、さっきまで読んでいた隼別の王子と女鳥の姫の恋物語が、ずっと昔に読んだように感じられます。そして、不思議と第二章の方が集中して読め、第一章の内容の理解度が深まってきます。

遠い昔の古墳時代を身近に感じられる作品です。

隼別王子の叛乱-田辺聖子
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