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紅蓮の女王

蘇我馬子が仏塔を建てたことを快く思わない物部守屋は、敏達大王の許可を得て仏塔を焼き払います。蘇我馬子は、炊屋姫を崇仏派に取り込み、敏達大王亡き後、物部守屋を倒して実権を握るために動き出すのでした。

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主な登場人物

あらすじ

敏達大王は、炊屋姫(推古天皇)の熱心なすすめで、これまでの排仏の態度を軟化していきました。そんな時、蘇我馬子が仏塔を建て、排仏派である物部守屋は苦々しく思うのでした。

物部守屋は、仏塔を焼き払うことを計画。崇仏に傾く炊屋姫の心情を考慮して、物部守屋が仏塔を焼くことに同意しにくい立場にあった敏達大王でしたが、予想に反して、炊屋姫が同意します。

炊屋姫の同意を得た敏達大王は、物部守屋が仏塔を焼き払うことを許可しました。

仏塔を焼かれたことに対し、蘇我馬子が何らかの反撃をしてくるだろうと予想していた物部守屋でしたが、その意に反し、蘇我馬子は行動を起こしません。

やがて、敏達大王が亡くなります。敏達大王は、彦人大兄皇子を次期大王にするようにと遺言していましたが、蘇我馬子は、大兄皇子(用明大王)を次期大王とすることを敏達大王が望んでいたと炊屋姫から重臣に言わせました。

蘇我馬子は、この時から権力を握るための計画を着実に実行に移していくのでした。

読後の感想

推古天皇を主人公にした作品です。

でも、推古天皇の生涯ではなく、敏達大王の死から推古天皇が即位するまでの期間が描かれています。

主人公は、即位する前の推古天皇(炊屋姫)ですが、物語の中心となるのは、蘇我馬子です。彼が、実権を握るまでの過程が本作の読みどころです。

古代という史料が少ない時代を描いているため、展開には著者の推理も随所に見られます。

崇仏派の蘇我馬子と排仏派の物部守屋が争い、最終的に蘇我馬子が勝利します。この争いは、単に崇仏か排仏かといった争いではなく、実権を蘇我氏が握るか物部氏が握るかの政争と捉えると、著者の推理が、無理なく物語を進めているのがわかります。

炊屋姫と三輪君逆との恋を利用し、政敵を次々と排除していく蘇我馬子の立ち回りが実に見事です。尾崎秀樹氏との対談も収録されており、読後に物語の理解をより深めることができます。

紅蓮の女王-黒岩重吾
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